エアバス ベルーガ

エアバス・ベルーガの概要

エアバス・ベルーガは、エアバス・インダストリー（現在のエアバス）が自社製の航空機部品を輸送する目的で開発された独自の貨物機です。この機体は、双発ワイドボディ旅客機であるエアバスA300-600Rを基に設計されたA300-600ST（Super Transporter）として知られています。特に胴体上部には巨大な貨物室があり、コックピットは胴体の下側に配置されています。この独特な外見から、シロイルカを意味する「ベルーガ」という愛称が付けられました。

開発の背景

エアバス社は1970年に欧州各国の航空機メーカーが協力し合って設立されました。その理念に基づいて、各メーカーが一定の業務量を確保するため、部品の生産を国際的に分業していました。トゥールーズの最終組立工場に各地で製造された部品を効率的に輸送する必要がありました。この任務を担うため、エアバス社はアメリカのスーパーグッピーを運用していましたが、やがてその輸送能力が限界に達しました。

これに伴い、エアバス社は新型輸送機の開発計画に着手しました。この新機体は、エアバスA300-600Rの設計に基づく大型貨物輸送機であり、1991年にスーパー・エアバス・トランスポート・インターナショナル（SATIC）が設立され、新機体の開発が正式にスタートしました。

設計と生産

A300-600STの主翼やエンジンはA300-600Rと共通であり、胴体の上半分のみが新たに設計された。貨物室は特に太く作られており、最大幅7.10m、最大高7.10mという驚異的な大きさを持っています。この機体の設計においては、さまざまな風洞実験が行われ、空力特性や運用時のハンドリングを最適化するための形状が追求されました。

ベルーガは1994年に初飛行を果たし、その後も5機が製造されました。各機体は必要な部品を分担して生産し、1995年にはすべての機体がエアバス社に引き渡されました。

運用開始とその後

ベルーガは1996年から運航を開始し、エアバス機の部品を各地から最終組立工場まで運ぶ任務に就きました。新しい貨物搭載システムにより、搭載作業が大幅に効率化され、必要な人員も18人からわずか2人に減少しました。この機体によって、エアバスはより迅速かつ効率的に部品を輸送することが可能になりました。

また、エアバスはベルーガを使ったチャーター輸送業務にも進出し、特に人工衛星やヘリコプターの大きな貨物を運ぶ案件が増えていきました。日本では1999年に「民衆を導く自由の女神」と題された重要な絵画が運ばれるなど、さまざまな業務で活躍しています。

後継機と今後の展望

近年では、ベルーガの後継機としてエアバスA330を基にした「ベルーガXL」の開発が進められており、2025年までに現在のベルーガは退役する予定です。この新型機は、エアバスの需要に応えるべく、高い運搬能力を持つことが期待されています。

主要特性

ベルーガは全長56.15m、全幅44.84m、そして最大離陸重量155トンを誇ります。最大積載量は47トン、貨物室の容量はおよそ1,400立方メートルで、特に大きな貨物を扱うことができるという優位性があります。

このようにエアバス・ベルーガは、そのユニークな設計と効率的な物流能力によって、航空機製造における重要な役割を果たしてきたと言えるでしょう。

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