民部省 (明治時代)

民部省：明治政府の行政を担った省庁とその変遷

民部省は、明治維新後の1869年（明治2年）に設置された日本の省庁の一つです。当初は国内行政全般を管轄する重要な役割を担っていましたが、わずか数年で廃止されるという短い歴史を持っています。その設立から廃止までの経緯、そしてその背景には、明治政府内部の複雑な政治力学が深く関わっていました。

設立と所管業務

民部省は、1869年8月15日、それまでの民部官を改組する形で太政官（政府）に設置されました。設置当初は、広範な行政業務を所管していました。具体的には、国土管理、土木工事、郵便、鉱山開発、その他庶務など多岐に渡る業務を担っていました。

大蔵省との合併と分離

翌月の9月16日、民部省は大蔵省と合併し、「民部・大蔵省」という、いわば合同組織が誕生しました。この合併は、徴税と財政を一体化することで中央集権体制を強化しようとする政府の方針に基づいていました。薩摩藩出身の岩倉具視や大久保利通らによる漸進的な改革と、長州藩出身の木戸孝允らによる急進的な改革の対立が背景にありました。特に、木戸孝允派が合併を強く推進したとされています。

しかし、この合併は長くは続きませんでした。合併後も両省の幹部は兼務する形をとっていましたが、地租改正の方針をめぐる対立が表面化しました。民部省は農民の窮状を考慮し減税を主張する一方、大蔵省は財政収入の確保を優先しようとしたのです。

この対立を背景に、大久保利通らによって、1870年（明治3年）8月6日、民部省と大蔵省は再分離されました。再分離の背景には、地方官からの支持を受けた大久保利通、広沢真臣、副島種臣、佐々木高行の4参議による働きかけもありました。しかし、旧幕臣官吏追放といった大久保の主張は受け入れられず、租税に関する権限は依然として大蔵省が掌握したため、両省間の対立は解消されませんでした。

組織変遷と廃止

再分離後も民部省は組織改編を繰り返しました。1870年8月9日には社寺掛（のち寺院寮）が設置され、12月12日には殖産興業を目的とする工部省が民部省から分離しました。そして、1871年（明治4年）9月11日、民部省は大蔵省に合併され、ついに廃止されました。わずか2年余りの短い歴史でした。

まとめ

民部省は、明治政府初期の重要な行政機関として、国内行政の基礎を築きました。しかし、その存続期間は短く、大蔵省との合併と分離を繰り返すなど、波乱に満ちた歴史をたどりました。その背景には、明治政府内部における様々な政治勢力の思惑や、財政政策をめぐる対立がありました。民部省の歴史を理解することは、明治政府の行政制度の形成過程を理解する上で不可欠です。その短いながらも重要な歴史は、日本の近代化における重要な一ページを刻んでいます。

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