水の中のASIAへ

水の中のASIAへ

『水の中のASIAへ』は、松任谷由実（ユーミン）が1981年5月21日に発表した12インチEPであり、11枚目のオリジナルアルバムとされています。東芝EMIからリリースされ、EP（ETP-40143）とCT（ZT15-789）の形態で発売されました。

リリースとコンサート

アルバムのリリースに先駆け、1981年5月5日から9月11日にかけて、『水の中のASIAへ』コンサートツアーが開催されました。このライブの模様は後にビデオ化され、『1981 Yuming Visual Volume1』として発売されています。1985年6月1日には初のCD化（CA25-1137）がなされ、1999年2月24日には、当時の12インチEPのブックレットを復刻し、バーニー・グランドマンによるデジタルリマスタリングを施したリマスタリングCD（TOCT-10644）とEP（TOJT-10644）がリリースされました。

ジャケットとエピソード

ジャケットは、シンガポールの名門ホテル『ラッフルズ・ホテル』で撮影されました。ユーミン自身が日本から着物を持参し、自ら着付けを行ったそうですが、ラジオ番組で帯締めの位置を間違えてしまったというエピソードを語っています。

音質向上への実験的な試みとして、発売当初は12インチEP（45回転）でリリースされましたが、レコード盤のサイズが12インチであることから、33回転で再生してしまうリスナーが続出。「別人(男)が唄っている」といった誤解を招く、CD全盛の時代ならではの笑い話も生まれました。

受賞

第23回日本レコード大賞ベストアルバム賞（1981年）を受賞し、授賞式にはユーミン本人がステージに登場しました。

収録曲と楽曲解説

1. スラバヤ通りの妹へ
2. HONG KONG NIGHT SIGHT
3. 大連慕情
4. わき役でいいから

スラバヤ通りの妹へ

インドネシアの首都ジャカルタで出会った少女に語りかけるようなポップス。スラバヤ通りは、ジャカルタにある有名な骨董街で、観光バスのルートにもなっています。曲の後半に登場する「スラバヤ」は、スラバヤ通りの名前の由来となったインドネシア第2の都市スラバヤを指します。歌詞には、太平洋戦争の日本軍による占領の影響や、オランダ統治時代の建物が高層ビルへと姿を変えていく様子など、インドネシアの歴史が織り込まれています。曲中に繰り返される「RASA SAYANG GEH」はインドネシア語で、「愛おしいね」といった意味合いです。ほぼ同名のインドネシアの童謡「Rasa Sayange」が存在し、歌詞の「そのつぎを教えてよ」は、この童謡の続きを指していると推察できます。この曲は、1999年に大江千里、2015年には元ちとせによってカバーされています。

HONG KONG NIGHT SIGHT

機内アナウンスのSEから始まるこの曲は、ユーミンのレパートリーの中で唯一、本人が作曲していないナンバーとして知られています。元々は1977年に松任谷正隆のアルバム『夜の旅人』に収録されていた曲のカバーで、ちなみにそのアルバムのジャケットはユーミンが担当しています。

大連慕情

亡き父を想う娘の心情を描いた楽曲。中国の大連を舞台に、母に宛てた父の手紙を見つけた娘が、遠い異国の地に生きた父に思いを馳せるという内容です。この曲は、1977年に萩尾みどりへの提供曲として発表され、後に1995年にCalinがカバーしています。ユーミンの楽曲の中では珍しく父親について歌った曲ですが、作中の父親像は創作であり、実在するユーミンの父親は東京・八王子市で呉服店を営んでいます。

わき役でいいから

結婚を間近に控えた女性が、異国の地で働くかつての恋人へ「ときには思い出して」と最後の願いを綴るバラード。

参加ミュージシャン

• - キーボード: 松任谷正隆、中西康晴
• - ドラム：林立夫、島村英二
• - パーカッション：斎藤ノブ、浜口茂外也
• - ベース：後藤次利、岡沢茂
• - エレクトリック・ギター：松原正樹、鈴木茂
• - アコースティック・ギター：吉川忠英、松原正樹
• - スティール・ギター：尾崎孝
• - サキソフォン：Jake H. Conception
• - フルート：衛藤幸雄、Jake H. Conception
• - リコーダー：衛藤幸雄
• - ストリングス：トマト・ストリングス・アンサンブル
• - コーラス : 山本潤子、Lilica、Leona、Clara

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