水の眠り灰の夢

『水の眠り灰の夢』は、桐野夏生が1995年に発表した小説であり、調査探偵・村野ミロシリーズの第3作にあたります。ただし、本作は主人公ミロの義父である村野善三を主人公とした番外編的な位置づけの長編小説です。

物語の舞台は高度経済成長期の東京。黎明期の週刊誌でトップ屋として活躍する若き日の村野善三、通称・村善が主人公です。彼は、トップ記事を量産する傭兵部隊〈遠山プロ〉の一員として、日々事件を追いかけています。そんな中、世間を騒がせている連続爆弾魔・草加次郎による地下鉄爆破事件が発生。村野は、この事件の背後に潜む真相を突き止めようと奔走します。

一方、村野は個人的な問題にも直面します。家出した甥を連れ戻す際に、一緒に保護した女子高生・タキが殺害されるという事件が発生。村野はなんと、殺人事件の容疑者として疑われてしまうのです。身の潔白を証明するため、村野は草加次郎事件と女子高生殺人事件、二つの事件の真相を同時に追うことになります。

物語は、村野が二つの事件を追いながら、自身の過去と向き合い、ミロとの関係を深めていく過程を描いています。ミロ自身は物語にほとんど登場しませんが、彼の出生に関する重要な秘密が明かされます。また、村野がどのようにしてトップ屋から調査探偵へと転身したのか、その経緯も語られています。

『水の眠り灰の夢』は、スリリングな展開と、複雑に絡み合った人間関係が魅力の作品です。桐野夏生ならではの、社会の暗部を鋭く抉る描写も健在で、読者は物語に引き込まれることでしょう。過去と現在が交錯する中で、村野善三がどのような真相にたどり着くのか、最後まで目が離せない作品です。

本書は1995年に文藝春秋から単行[[本]]として刊行され、1998年には文春文庫から文庫版が出版されました。2016年には文藝春秋から新装版も出版されており、現在でも多くの読者に愛されています。

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