水塚

水塚（みづか）とは

水塚（みづか、みずつか、みつか）は、洪水時に人々が避難するために設けられた独特な水防施設です。具体的には、母屋よりも数十センチメートルから最大3メートルほど高く土を盛り、その上に倉などの建物を建てたもの、またはその盛土自体を指します。

水塚の構造と役割

水塚は、洪水が頻繁に発生する地域において、人々の生活を守る重要な役割を果たしてきました。建物の1階部分には、米俵や味噌樽、醤油などの食料が保管され、洪水によって食料が不足する事態に備えました。2階には、布団やちゃぶ台、衣類を入れた長持や行李などの生活道具が置かれ、避難生活に必要な物資が確保されていました。地域によっては、母屋から仏壇などを滑車を使って水塚に引き上げる工夫も見られました。

各地の類似施設

水塚のような建築形式は、日本各地の洪水常襲地域に広く見られます。荒川流域や利根川流域では「水塚」と呼ばれますが、木曽三川では「水屋（みずや）」、淀川中流部では「段蔵（だんぞう、段倉）」、信濃川中流部では「水倉（みずくら）」と呼ばれる同様の目的を持つ施設が存在します。これらの施設も、水塚と同様に、洪水から家財や食料を守るために重要な役割を果たしていました。

水塚の現状

近年の治水工事の進展により、洪水のリスクが大幅に減少した結果、多くの水塚はその役割を終え、消失していきました。しかし、その歴史的・文化的な価値を伝えるため、現在では千葉県立関宿城博物館や埼玉県立川の博物館などで水塚が展示されています。これらの博物館では、水塚の構造や役割、当時の人々の生活を知ることができます。

水塚は、単なる避難施設ではなく、洪水と共存しながら生活を営んできた人々の知恵と工夫の結晶です。その存在は、自然災害に対する備えの重要性を現代に伝える貴重な遺産と言えるでしょう。

参考文献

安藤萬壽男（編著）1975年『輪中その展開と構造』古今書院。
埼玉県志木市教育委員会著1988年『水害と志木』

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