水揚げ (花街)

水揚げの歴史と意味

水揚げは、江戸時代から続く重要な慣習であり、売春防止法施行以前の遊女や芸妓にとって、初めて客と寝所を共にする儀式を指します。この行為を通じて、女性は処女を喪失し、お客を取ることができる一人前の存在となります。ここでは、水揚げの由来や京都や吉原の事例を交えながら、その歴史と文化的な意味合いについて詳しく解説します。

水揚げの語源

水揚げという言葉にはいくつかの由来説があります。ひとつは、商人が舟から荷物を下ろして店に並べる行為を「みずあげ」と呼んだことです。このことから、女性が初めて男性と接することをも同様に表現したと考えられています。

また、万葉の時代には処女を「未通女」と称し、男性に出会わない若い女性を「揚げる」という意味も含まれているという説もあります。「未通揚げ」という表現は、そうした文化的背景を反映しているものです。

遊女と芸妓における水揚げ

遊女の場合、彼女たちは禿（かむろ）から新造に成長し、一人前の証として初めて客と同衾する機会を持ちます。この水揚げの儀式は、遊女がその職業に就くための重要なステップです。

一方、芸妓においては、年少芸妓や見習い芸妓から一人前の芸妓に昇格する通過儀礼としての意味合いが強く、特定の旦那を持つことが一般的な流れとなります。

水揚げのための客は、道に熟達した通人（つうじん）の中でも、特に財力のある者が選ばれ、その依頼に応じたり、自ら名乗り出たりしてこの役割を担います。

現代における水揚げ

近年の芸妓にとって、初めて旦那を持つ場合が「水揚げ」とみなされることがあります。この概念は古くからの初夜権に由来しています。民間の風習や行事、例えば中山太郎の著作『売笑三千年史』に見られる類似の習慣によって、現代でもその名残を感じることができます。

京都における水揚げ

京都の舞妓の場合、水揚げが完了すると、髪型が割れしのぶからおふくに変更されます。おふくは舞妓専用の髪型であり、これもまた一人前になるための象徴的な行為です。水揚げを経験した舞妓は、通常12歳から13歳頃にこの過程を経て、最終的に芸妓へと昇格します。

近年では、京都における舞妓の水揚げは、色事を伴わず、単なる髷の変更として理解されることが増えています。また、芸妓に昇格する際の襟替えも、必ずしも色事が伴うわけではなくなっています。

吉原の事例

一方、吉原では、芸者が一人前になるために水揚げされることはなく、体を売ることと芸を売ることは厳密に分けられていました。このように、地域によって水揚げの意義や実態は異なります。

結論

水揚げは、江戸時代から続いた文化的な儀式であり、その背景にはさまざまな歴史や慣習が存在します。芸妓や遊女にとっては、重要な通過儀礼として多くの意味を持ち続け、現代においてもその名残を見ることができます。

もう一度検索