水替人足

水替人足（みずかえにんそく）とは

水替人足は、鉱山において発生する排水を外部へ排出することを専門とした労働者のことを指します。特に江戸時代の佐渡金山においてその存在が知られています。この職業は、地下での高い水位に悩む鉱山経営において極めて重要でした。地下水が湧出すると、鉱道の安全性を脅かすため、排水は採掘作業にも密接に関連しており、適切に処理されなければ運営に支障をきたす可能性がありました。

水替の難しさ

地下での湧水対策は、鉱山の運営上不可欠であり、その方法は坑道の位置によって異なります。高い位置にある場合は、水を自然落下させることが可能ですが、低い位置の場合はその排出が非常に困難になります。最初の蒸気機関、トーマス・ニューコメンによる発明も、鉱山排水を目的としていました。この機関の効率は悪く、その燃料として膨大な量の石炭が必要とされたものの、それでもなお鉱山の運営は続けられました。

江戸時代の佐渡金山と水替人足

特に佐渡金山では、坑道が海面下に進むにつれて湧水の量が増加し、その排水のために多くの人員が必要でした。当初、水替人足に従事していたのは町民や農民が中心でしたが、大規模な採掘とともに過酷な労働環境が拡大し、次第に人手不足が急激に悪化しました。そのため、江戸時代中期から無宿者が強制的に水替人足として送られるようになりました。この政策は、犯罪予備軍とされる無宿者を利用する一方で、社会秩序の維持を目的としたものでした。

無宿者の利用と社会的背景

1777年から始まったこの制度は、勘定奉行の石谷清昌の発案によるもので、懲罰的な要素と社会浄化の目的がありました。無宿者は数十人ずつ毎年送られ、最終的に終了するまでの1874人もの人々が佐渡島に送られました。こうした模様は、当時の社会情勢や飢饉、犯罪の増加とも関連していました。

特に天明の大飢饉による社会不安は、無宿者の流入を加速させ、彼らを強制労働に従事させる結果となりました。初めは無宿者のみが対象とされていましたが、その後、より厳しい刑罰を受けた者や改悛しなかった者も水替人足として送られるようになりました。

過酷な労働とその結果

水替人足として働くことは過酷な労働であり、3年以上生存することは難しいと言われていました。そのため、逃亡者が後を絶たず、結果として彼らを隔離する役割は果たしていなかったのです。さらに、佐渡島では犯罪を犯した場合、禁錮という厳しい罰が課せられましたが、逃亡した者に対しては死罪が待っていました。

このように、水替人足の制度は、経済的な背景、厳しい労働環境、社会問題が交錯する中で形成され、特に佐渡金山の歴史に深く関わっていたのです。その存在は、江戸時代の社会構造や労働環境の厳しさを今に伝える貴重な証言となっています。

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