水源地域対策特別措置法

水源地域対策特別措置法について

水源地域対策特別措置法（すいげんちいきたいさくとくべつそちほう）は、1973年に制定された法律で、ダムによる水没や移転によって不利益を被る水源住民の生活支援を主な目的としています。これにより、住民の福祉向上や生活安定を図り、移転に伴って起こる過疎問題や地域の負担を軽減するための施策が行われています。法の略称は「水特法」として広く知られています。

法律の成立の背景には、1957年に発生した「蜂の巣城紛争」があります。この事件は、松原ダム（筑後川）や下筌ダム（津江川）の建設に関連して発生し、住民の権利と利益の保護が求められることとなりました。このような歴史的な経緯から、水源地域住民への適切な支援体制が必要とされるようになりました。

法律の対象と施策

水源地域対策特別措置法の適用対象となるダムは、水没戸数が20戸以上、または水没農地面積が20ヘクタール以上のものです。指定されたダムに対しては、道路や下水道、公共施設、福祉施設などの建設費用が国庫補助や下流の受益地（自治体や水道事業者、電力会社など）によって一部負担されます。特に、水没戸数が150戸以上または水没農地面積が150ヘクタール以上の場合には、特別措置法第9条に基づく国庫補助率が引き上げられることになり、これに該当するダムは「法9条等指定ダム」と呼ばれています。1974年には初めての指定ダムとして20ダム1湖沼が選定され、現在では全国で95ダムと1湖沼が指定されています。

さらに、1976年からは「水源地域対策基金制度」が創設され、地方自治体が協力して補助金を貯蓄し、水没者への代替地の取得に対する利子の支給や生活相談員の設置、生活道路の整備、上下流地域間の交流事業などが行われてきました。利根川や荒川に設立された水源地域対策基金を皮切りに、全国各地に同様の基金が設置されています。このような取り組みを通じて、地域の活性化や住民への支援が実施されています。

法律の運営

水源地域対策特別措置法に関する業務は国土交通省の水管理・国土保全局水源地域対策室が担当しており、この法律に基づく施策が適切に導入・運用されるように努めています。また、法律の指定に関しては、さまざまな要素が考慮され、地域経済や住民生活に与える影響を軽減するための調査・評価が行われています。

この法律は、全国のダム建設とその周辺地域において、住民の生活や福祉を向上させることを目指す重要な法律です。特に、経済的な貢献や地域間の交流促進など、多様な効果をもたらす可能性を秘めている点が大きな魅力と言えるでしょう。今後も持続可能な地域づくりのための重要な法制度として、その役割が期待されています。

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