水素化ホウ素アルミニウム

水素化ホウ素アルミニウム：特性と用途

水素化ホウ素アルミニウム(Al(BH4)3)は、アルミニウムボロヒドリドとも呼ばれる無機化合物です。化学式から分かる通り、アルミニウム原子とホウ素原子に水素原子が結合した構造を持ちます。室温では揮発性で自然発火性の液体として存在し、取り扱いには細心の注意が必要です。その危険性にも関わらず、水素化ホウ素アルミニウムは、ロケット燃料やジェット燃料の添加剤、そして化学実験における強力な還元剤として幅広く利用されています。

多くの金属水素化ホウ素化合物がイオン結合性であるのに対し、水素化ホウ素アルミニウムは共有結合性であるという特異な性質を持っています。この性質が、その反応性や用途に大きく影響を与えています。

合成法

水素化ホウ素アルミニウムの合成には、主に以下の2つの方法が知られています。

方法1：水素化ホウ素ナトリウムと塩化アルミニウムの反応

この方法は、[水]]素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)と塩化アルミニウム]を反応させることで[[水素化ホウ素アルミニウムを得る方法です。反応式は以下の通りです。

3 NaBH4 + AlCl3 → Al(BH4)3 + 3 NaCl

この反応は、塩化アルミニウムの水素化ホウ素ナトリウムに対する置換反応として理解できます。

方法2：水素化ホウ素カルシウムと塩化アルミニウムの反応

もう一つの合成法は、[水]]素化ホウ素カルシウム(Ca(BH4)2)と塩化アルミニウム]を用いる方法です。この反応も、[[塩化アルミニウムの置換反応であり、反応式は以下の通りです。

3 Ca(BH4)2 + 2 AlCl3 → 3 CaCl2 + 2 Al(BH4)3

どちらの方法も、適切な反応条件下で行う必要があります。例えば、非[自然発火]]性の溶媒である[[テトラヒドロフラン]を用いることで、反応の制御性を高めることができます。

反応性と用途

水素化ホウ素アルミニウムは、強力な還元剤として知られています。他の水素化ホウ素化合物と同様に、ヒドリドイオン(H-)を供与する能力が高く、様々な有機化合物の還元反応に利用されます。

具体的には、カルボン酸エステルやアルデヒド、ケトンなどをアルコールに還元することができます。また、水と反応すると水素ガスを発生します。この性質を利用して、水素発生剤としての利用も考えられますが、自然発火性であるため安全性の確保が重要となります。

その危険性と強力な還元力から、主に実験室レベルでの使用に限定されており、工業規模での利用は限定的です。ロケット燃料やジェット燃料への添加剤としての利用は、その高いエネルギー密度に起因しています。

歴史と研究

水素化ホウ素アルミニウムの合成と性質に関する研究は、1950年代から盛んに行われてきました。特に、ジェットエンジンの着火特性の改善を目的とした研究が多数報告されています。これらの研究は、水素化ホウ素アルミニウムの燃料添加剤としての可能性を示唆しており、その後のロケット燃料開発にも貢献しました。

Fletcher, Edward; Foster, Hampton; Straight, David (1959). “Aluminum Borohydride and Mixtures with Hydrocarbons in Jet Engine Combustor Ignition”. Industrial & Engineering Chemistry 51 (11): 1389. doi:10.1021/ie50599a044.

Hinkamp, James B.; Hnizda, Vincent (1955). “Aluminum Borohydride Preparation”. Industrial & Engineering Chemistry 47 (8): 1560. doi:10.1021/ie50548a032.

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