水素水

水素水とは

水素水は、水素分子ガスを水に溶解させたものです。純粋な水と同様に、無味、無臭、無色であり、見た目では区別がつきません。水素は水に溶けるものの、その溶解度は非常に低いため、水素水に含まれる水素の量はごくわずかです。工業分野では、半導体や液晶の洗浄に使用されています。

水素水の生成方法

水素水は、水素ガスを水に溶解させる、水の電気分解、マグネシウムと水の化学反応などによって生成されます。工業用の水素水製造には、ガス透過膜モジュールを用いた方法があり、高純度水素水を安全かつ効率的に製造できます。また、アルカリ電解水を生成する過程でも水素が水に溶け込みます。

水素水の保存方法

水素は分子が小さく、ガラスやプラスチック容器を透過しやすい性質を持っています。そのため、水素水の長期保存にはアルミニウム製の容器が適しています。しかし、通常の条件下では水素が水から抜けやすいため、容器内を加圧することで高濃度の水素を水中に保持する方法が用いられます。

水素水の利用

工業利用

半導体や液晶の洗浄に水素水が用いられています。これは、水素水が洗剤よりも環境負荷が低い洗浄液となるためです。水素が微小気泡として存在すると、キャビテーションが発生し、洗浄効果が高まります。

農業利用

植物の成長促進やストレス耐性向上に水素水が利用されています。また、水素の抗酸化作用は、農産物の保存にも役立ちます。研究では、野菜や果物を水素水に浸すことで、酸化や水分減少を抑制できることが確認されています。

生体研究

水素が持つ抗酸化作用は、様々な疾患の治療に役立つ可能性が示唆され、研究が進められています。水素の摂取方法として、水素ガス吸入や水素水飲用がありますが、水素水の方が安全かつ実用的です。動物実験では、脳虚血による損傷や、神経細胞保護効果などが確認されています。また、水素が体内で代謝され、一部が捕捉されることも示唆されています。

医療研究

ヒトでの臨床試験も行われていますが、まだ研究段階です。パーキンソン病に対する効果を検証した臨床試験では、有意な差は確認されていません。一方、透析患者の慢性炎症を抑制する効果や、高LDLコレステロール血症の改善効果などが示唆されています。しかし、現時点では、健康な人への有効性については十分なデータがないとされています。

水素水の安全性

日本では、水素は食品添加物として、製造用剤として承認されています。アメリカでは、飲料への酸化防止目的での使用が認められています。ただし、国立健康・栄養研究所は、ヒトに対する安全性について、信頼できるデータが不足しているとしています。

水素水の問題点

市販されている水素水の中には、水素濃度が低いものや、時間が経つにつれて水素が抜けやすいものがあります。また、健康効果を謳う商品の中には、法規制に抵触する可能性があるものも存在します。国民生活センターは、水素水に関する商品テスト結果を発表し、消費者に対して注意を呼びかけています。

国民生活センターの調査結果

国民生活センターは、水素水生成器や水素水飲料について、その効果や水素濃度を検証しました。その結果、製品によっては広告で謳われている効果や水素濃度が確認されないものもありました。また、広告でヒドロキシルラジカルを抑制すると謳われている製品についても、その効果が人体に対するものではないことが確認されました。これらの結果から、同センターは消費者に誤解のないように情報収集を促しています。

法律違反

一部の水素水販売業者による虚偽の説明や強引な勧誘は、特定商取引法や景品表示法に違反するとして、行政処分を受けています。また、医薬品医療機器等法に違反するとして、書類送検された事例もあります。

まとめ

水素水は、その生成方法から、工業、農業、医療分野での利用まで、幅広い可能性を秘めていることが期待されています。しかし、現時点では、特に人体への効果については科学的な証拠が不足しています。水素水を購入する際は、情報を十分に確認し、過大な期待を抱かないように注意が必要です。

参考情報

水素水 - 素材情報データベース＜有効性情報＞（国立健康・栄養研究所）
国民生活センターの調査結果
* 各種研究論文

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