水野惣平

水野惣平（みずの そうへい、1923年9月6日 - 1983年2月12日）は、昭和時代に活躍した日本の実業家であり、アラビア石油の社長を務めた人物です。その生涯は、日本の経済史、特に石油産業の発展において重要な役割を果たしました。

生い立ちと学歴

水野惣平は、実業家として知られる山下太郎を実父に持ちます。山下太郎は、「アラビア太郎」、「満州太郎」、あるいは「山師太郎」とも呼ばれた人物です。また、養父は「財界四天王」の一人として知られ、池田勇人を支えた水野成夫です。水野惣平は、東京府立一中、旧制府立高等学校を経て、1948年（昭和23年）に北海道大学理学部を卒業しました。理系の学歴を持ちながら、後に実業界で大きな足跡を残すことになります。

実業家としてのキャリア

大学卒業後、水野惣平は富国生命保険、日本開発銀行を経て、小林中事務所で秘書役を務めます。その後、1964年（昭和39年）に富士石油の専務に就任。1968年（昭和43年）にはアラビア石油の専務となり、1971年（昭和46年）には社長に就任しました。社長就任後、わずか2年で会長に就任し、経団連理事にも名を連ねるなど、その手腕は高く評価されました。

アラビア石油での活動

水野惣平は、アラビア石油において、石油の採掘から精製までの一連の事業（アップストリームからダウンストリーム）への進出を推進しました。また、1973年（昭和48年）の石油ショック前には、アラブ諸国を支持するよう政府に要望するなど、国際情勢を見据えた先見的な行動も注目されました。しかし、同年には自宅から原油情勢や交渉に関する文書が盗まれるという事件も発生しました。水野惣平の卓越したロビー活動は、アラブ王族との親密な関係を築き、その後の早期の経済活動正常化に大きく貢献したと言われています。

人柄とエピソード

水野惣平は、非常にマナーに厳しい人物としても知られています。接待の際には、客を見送った後、部下を座敷に戻し、各々の発言や立ち居振る舞いについて厳しく講評したというエピソードが残っています。このことから、水野惣平は、礼儀作法を重んじ、常に高い意識を持って業務に取り組んでいたことが伺えます。

晩年

水野惣平は、膵癌と肝癌という二つの癌に長年苦しみましたが、アラビア石油の会長職を退任することなく、現職のまま1983年（昭和58年）に永眠しました。闘病生活で痩せた姿が写真週刊誌に掲載されたこともありました。その生涯は、まさに激動の昭和時代を駆け抜けた実業家の姿であり、多くの人々に感銘を与えました。

水野惣平は、その卓越した経営手腕、国際情勢に対する深い洞察力、そして何よりも病と闘いながらも職務を全うした強い意志によって、日本の石油産業史に大きな足跡を残しました。

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