氷室神社

氷室神社

氷室神社は、奈良県奈良市春日野町に位置する神社です。古くは氷の神を祀り、南都楽所の拠点として栄えました。その歴史と文化は、現在も大切に受け継がれています。

歴史

氷室神社の由緒は、「氷室神社縁起」絵巻や『続日本紀』などに記されています。和銅3年（710年）に元明天皇の勅命により、春日山にある月日磐に氷神が祀られたのが始まりとされています。

春日野の氷池で結氷した氷を氷室に蓄え、平城京へ献氷する制度が確立。和銅4年（711年）には、献氷の勅祭が初めて行われ、以後、毎年氷が納められました。

平安遷都後にこの制度は廃止されましたが、貞観2年（860年）に清和天皇の時代に現在地に奉遷。氷の作り方を教えた闘鶏稲置大山主命、氷を献上した額田大仲彦命と大鷦鷯命が祀られました。建保5年（1217年）には社殿が建立されました。

13世紀には南都楽所が置かれ、舞楽の一大拠点として発展。神職も楽人が務めるようになりました。春日社の別宮として、春日社や興福寺などによって支えられていましたが、明治時代の神仏分離により、興福寺との関係は断たれました。南都楽所も廃止され、宮内省雅楽部へと統合されました。

現在は、氏子と冷凍氷業界の奉賛により維持されています。

祭神

主祭神は以下の三柱です。

闘鶏稲置大山主命
大鷦鷯命
額田大仲彦命

境内

春日造の一ノ鳥居が登大路に面しており、境内には石灯籠や手水舎、祓戸社があります。鏡池や枝垂れ桜、表門（四脚門）、東西廊なども見どころです。

本殿: 文久年間に再建されたもので、奈良県指定有形文化財です。
拝殿: 舞殿でもあり、奈良市指定有形民俗文化財に指定されています。かつての南都楽所の中心部でした。
舞光社: 南都楽所の楽祖である狛光高を祀っています。
直会殿: 社務所、集会所として利用されています。
表門: 元内裏の日華門で、奈良県指定有形文化財です。
東西御廊: 元内裏の御輿宿で、奈良県指定有形文化財です。
招魂社: 西南戦争の戦没者を合祀しています。
祓戸社: 祓所、住吉社とも呼ばれています。
鏡池: 心字池として親しまれています。

文化財

重要文化財: 木造舞楽面 陵王
奈良県指定有形文化財: 本殿、表門及び東西廊
奈良市指定有形民俗文化財: 氷室神社舞殿（拝殿）

神事

献氷祭

奈良時代から続く祭りで、現在は5月1日に行われます。製氷・販売業者が参列し、業績成就を祈願します。花氷や氷柱が奉納され、舞楽が奉じられます。

例祭

悪疫鎮止のために始められたとされ、現在は10月1日に行われます。宵宮では氷献灯が飾られ、例祭では朝座と夕座が行われます。

現地情報

所在地: 奈良県奈良市春日野町1-4
交通アクセス: 近鉄奈良駅から徒歩15分、または奈良交通市内循環バス「氷室神社・国立博物館前」下車すぐ

周辺情報

奈良公園
興福寺
東大寺

氷室神社は、氷の神を祀る古社として、また南都楽所の拠点として、歴史と文化を今に伝える貴重な場所です。ぜひ一度訪れてみてください。

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