永井照雄

永井照雄

概要

永井照雄（ながい てるお）は、明治後期から昭和初期にかけて、日本の官僚として朝鮮総督府に奉職した人物です。1888年（明治21年）8月29日に広島県豊田郡吉名村（現在の竹原市）で生を受け、1942年（昭和17年）1月4日に53歳でその生涯を閉じました。彼のキャリアは、専門技術分野から始まり、次第に朝鮮半島の地方行政における要職へと広がっていきました。

経歴

永井の学究生活は、まず農林分野から始まりました。1917年（大正6年）に鹿児島高等農林学校を卒業後、彼は朝鮮総督府の営林廠に勤務し、林業に関わる実務経験を積みました。しかし、彼の学びへの意欲は留まることを知らず、さらなる知見を求めて京都帝国大学へと進学します。1923年（大正12年）、同大学の経済学部を卒業し、改めて朝鮮総督府の属官として任用されました。

官僚としての資質を認められた永井は、1925年（大正14年）に高等試験行政科に合格し、本格的に行政官としての道を歩み始めます。彼は朝鮮各地の重要ポストを歴任しました。例えば、咸鏡北道では学務課長および視学官として教育行政に携わり、地域の教育振興に尽力しました。その後、慶尚南道に転じ、地方課長として地域社会の統括に、また産業課長として産業振興に力を注ぎました。これらの経験を通じて、彼は朝鮮における多様な行政分野に関する深い理解と実行力を培っていきました。

地方行政における実績が高く評価され、永井はより責任のある役職へと昇進します。1932年（昭和7年）には木浦府尹に就任しました。府尹は、当時の朝鮮において主要都市の行政を担う重要なポジションでした。木浦での勤務を経て、翌1933年（昭和8年）には、さらに規模の大きい仁川の府尹へと転任します。仁川は京城（現在のソウル）の外港として重要な機能を持ち、交通・貿易の拠点でした。永井はこの要衝の地における行政のトップとして、都市の運営全般を任されることになりました。

最期

永井照雄の生涯は、仁川府尹としての公務に身を捧げる中で、不慮の形で幕を閉じました。1941年（昭和16年）12月20日、彼は体調を崩し、40度にも及ぶ高熱があるにも関わらず、仁川神社で行われた戦捷奉告祭に参列しました。これは当時の緊迫した情勢下における重要な公務であり、永井は責任感から出席を決意したのでしょう。しかし、無理がたたったのか、祭典から帰宅後、彼の病状は急変し、急性肺炎を併発しました。懸命な治療が施されましたが、病状は改善せず、年が明けた1942年（昭和17年）1月4日、永井照雄は53歳で亡くなりました。重要な公務遂行中に倒れた彼の死は、当時の官僚が直面していた職務の重さや、公務への献身ぶりを示すものと言えるでしょう。

まとめ

永井照雄は、広島県に生まれ、朝鮮総督府の官僚として、林業、教育、産業、そして都市行政に至るまで、幅広い分野で活躍しました。特に木浦府尹、仁川府尹といった要職を務め、その職務に誠実に向き合いました。仁川府尹在任中に病に倒れ殉職した彼の生涯は、当時の時代背景の中で一人の官僚がいかに職務に邁進したかを示す一例と言えるでしょう。

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参考文献：
* 『輓近大日本拓殖史』日本行政学会、1934年。

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