永山一夫

永山一夫：俳優・声優として生きた在日朝鮮人の生涯

永山一夫（1935年1月28日生まれ、没年不詳）は、日本を拠点に活躍した俳優、声優です。彼の本名は権秉純（クォン・ビョンスン）で、慶尚南道居昌郡出身の在日朝鮮人でした。複雑な歴史的背景の中で、永山は多様な役割を演じ、独自の足跡を残しました。

子供時代と日本の芸能界入り

1940年、永山は両親とともに日本に移住しました。幼少期には大山昇という日本名を使用していましたが、終戦後には東京朝鮮中等学校、東京朝鮮中高等学校で学びました。その後、NHKのテレビ俳優養成所のオーディションに合格。芸名である「永山一夫」は、戸籍を借りた日本人名でした。21歳で結婚したものの、妻は1966年頃に心臓病で亡くなっています。

声優としての成功と俳優業

永山は声優として、NHKの幼児番組『おかあさんといっしょ』の人気コーナー『ブーフーウー』（1960年～1967年）で、おおかみの声を担当し、広く知られるようになりました。「おれはいじわるおおかみだ」「おつきさまはあおいよ」といった挿入歌は、現在もCDで聴くことができます。その後も、『ダットくん』（1967年～1969年）、『とんでけブッチー』（1971年）など、様々な番組で声優として活躍しました。

一方、俳優としては映画やテレビドラマに多数出演。映画では『日本暗黒史』シリーズ、『昭和残侠伝』シリーズなどの作品で悪役を演じ、存在感を示しました。テレビドラマでは、『ザ・ガードマン』などの人気シリーズにも出演しています。 幅広い作品への出演により、永山一夫の名は日本のエンターテインメント界に刻み込まれました。

北朝鮮への移住とその後

1971年夏、永山は北朝鮮への移住を表明しました。その理由は、10年前に先に移住していた父親の病気でした。同年10月22日、帰還事業の一環として、息子2人を連れて北朝鮮へ渡りました。出発当日はNHKの番組『スタジオ102』で特集が組まれ、黒柳徹子も出演して永山への送別の言葉を述べました。しかし、北朝鮮移住後の消息は不明でした。その後、ライターの尾形敏朗氏による2023年2月のツイートで、永山一夫は既に亡くなり、息子は医者をしていると黒柳徹子への取材で判明したと報告されています。

永山一夫のフィルモグラフィー

永山一夫は、数多くの映画やテレビドラマ、アニメ作品に出演しました。代表作の一部を以下に示します。

映画：『わんわん忠臣蔵』『放浪のうた』『日本暗黒街』『日本侠客伝』『昭和残侠伝』シリーズなど多数

テレビドラマ：『ザ・ガードマン』『七人の刑事』『銭形平次』『キイハンター』『三匹の侍』『プレイガール』など多数

アニメ：『鉄人28号』『遊星少年パピイ』など

吹き替え：『ロデオ』『赤い灯をつけるな』『黒い狼』など

人形劇：『ブーフーウー』『ダットくん』『とんでけブッチー』など

結論

永山一夫の人生は、在日朝鮮人としてのアイデンティティ、日本の芸能界での成功、そして北朝鮮への移住という、劇的な転換点を含んだ波乱に満ちたものでした。彼の活躍は、日本のエンターテインメント史に貴重な一頁を刻み、複雑な歴史的文脈における個人の生き様を示す象徴的な存在といえます。謎の多い晩年については、今後さらなる情報が明らかになることを期待したいところです。

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