永昌院 (山梨市)

永昌院：山梨の曹洞宗寺院の魅力

永昌院（えいしょういん）は、山梨県山梨市に位置する曹洞宗の寺院で、開基は甲斐守護職の武田信昌です。自然に囲まれた場所にあり、標高約480mの山の中腹からは甲府盆地の美しい景色を一望できます。ここでは、長い歴史と文化的な価値を持つ寺院の魅力を探っていきます。

歴史の深み

歴史を紐解くと、永昌院の前身は真言宗の寺院でしたが、永正元年（1504年）に武田信昌が一華文英を招き入れ、曹洞宗に転宗しました。文英は、開山として永昌院を創設し、彼自身も重要な禅僧でした。甲斐武田家が滅びた後も、永昌院の法灯は途絶えることなく、江戸中期には曹洞宗常恒会地に昇格し、数多くの伽藍を持つ大規模な寺院となりました。しかし、1909年には火災に見舞われ、重要な建造物のほとんどが焼失してしまいます。ただし、寺の宝である仏像や過去帳、古文書などは無事で、現在でも大切に保管されています。

文化財の宝庫

永昌院の中には開基武田信昌の位牌や墓所があり、法名「永昌院殿傑山勝公大禅定門」が刻まれています。また、宝篋印塔と五輪塔という二基の石塔が存在し、その基盤には信昌の法名と没年月日が記されています。中世の甲斐国では、五輪塔と宝篋印塔が一対として建てられる風習があったため、この石塔群には特に大きな意味があります。二世の住職の記述によれば、これらの石塔は信昌の七回忌と十三回忌に造立されたとされています。

また、室町時代には多くの禅僧の肖像画が描かれましたが、その中でも特に注目されるのが、1514年（永正11年）頃に描かれた一華文英の肖像画です。これは永昌院の第二世である菊隠により描かれたもので、室町時代の禅宗の文化を物語っています。

銅鐘の歴史

永昌院は甲斐五鐘の一つを有しており、この銅鐘は1376年に藤原昌栄によって鋳造されました。最初は明野村の大林寺に寄贈され、その後、甲府の東光寺を経て、1504年に永昌院に移されています。この鐘は、武田勝頼が戦に用いるために遠州に渡りましたが、元和年間ごろに再び永昌院に戻ったとされています。

矢坪の一つ火

永久に語り継がれる伝説として、「矢坪の一つ火」があります。永昌院の裏山では、夜になると火の玉が現れるという神秘的な現象があったとされ、村人たちがその正体を探ろうと試みました。同時に、伝海禅法院という僧侶がいたのですが、ある日、彼が見回りに出かけたまま戻らなくなり、村人たちは彼を探し続けます。結局見つからなかったため、村人たちは彼の姿を木像にして供養しました。すると、雨が降るたびにその木像に泥がつくという不思議な現象が続いたため、村人たちは彼が今でも山を見守っていると考えるようになりました。

おわりに

永昌院は、その歴史ありがある由緒正しい寺院であり、数々の文化財を保存しています。武田信昌の信仰や、村人たちの物語が交差するこの場所は、ただの寺院という枠にとどまらない魅力を持っています。訪れる人は、静かにこの地の歴史に耳を傾け、時の流れを感じることができるでしょう。ぜひ一度訪れて、その目で永昌院の魅力を感じてみてはいかがでしょうか。

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