永楽屋 (手ぬぐい)

株式会社永楽屋は、日本の古都である京都の中心部、中京区に本社を構える老舗企業です。その歴史は非常に古く、江戸時代初期にあたる元和元年（1615年）にまで遡ります。以来、今日まで約400年にわたり、現在の当主である十四代目の細辻伊兵衛氏に至るまで、代々染織製品の製造販売を家業としてきました。

創業時の屋号である「永楽屋 細辻伊兵衛商店」の名称は、戦国時代に織田信長から命を受けて出陣した先祖の直垂（ひたたれ：武士の普段着）に、永楽通寳の紋が入っていたことに由来すると伝えられています。その後、永楽屋ともう一つの店である大黒屋が合併し、元和元年に新たな出発を切りました。この創業以来、永楽屋は綿布商を営み続けています。

事業内容も時代の変化と共に移り変わってきました。創業当初の日本は木綿がまだ広く普及しておらず、主に絹布の反物を扱っていました。しかし、日本国内で木綿の栽培が盛んになり、普及が進むにつれて、永楽屋はいち早く木綿や麻などのより太い糸で織られた織物である「太物」を扱う商いへと転換を図りました。太物商としての事業は、木綿の普及拡大とともに発展していきました。

明治時代に入ると、紡績機を導入するなどして事業規模を拡大。昭和初期には京都市中京区（現在の三条通烏丸東入ル付近）に広大な敷地と建物を構え、土地約400坪、建物約350坪、間口十六間半（およそ30メートル）、そして百名を超える住み込みの従業員を擁するなど、目覚ましい繁栄を遂げていたと記録されています。しかし、第二次世界大戦中には、その広大な土地が延焼を防ぐための理由から強制疎開の指定を受けるという困難に見舞われました。

戦後も会社の拠点は移転を経験します。1964年（昭和39年）には、国立京都国際会館の建設に伴う国際電話局の開設により、烏丸通松原へ移転しました。この時期に存在した永楽屋ビル内には、かつて劇団そとばこまちのアトリエ兼劇場が入居していたというユニークな歴史もあります。そして1990年（平成2年）、現在の所在地である三条通室町上ルへと再び移転し、現在に至っています。

現在の株式会社永楽屋は、伝統的な手ぬぐいを主軸としながらも、現代のニーズに合わせた多様な染織製品を展開しています。「永楽屋細辻伊兵衛商店」や手ぬぐい専門店の「RAAK」、帆布鞄専門店の「伊兵衛Ihee」、呉服専門店の「京呉ふくほそ辻」、そしてフレーバーティー専門店の「ほそつじいへえTEAHOUSE supported by MLESNA」など、複数のブランドを展開し、幅広い商品を扱っています。店舗も本店をはじめ、四条店、祇園店、京都駅八条口店、宇治平等院店、永楽屋 祇園花見小路など、国内外からの多くの利用者が訪れる場所に展開しています。

なお、同じ京都市内にあり、同名の永楽屋という企業（1946年創業の和菓子・佃煮製造販売業）が存在しますが、両社には関連性は一切ありません。約400年にわたり京都の地で商いを続ける永楽屋は、長い歴史の中で培われた技術と伝統を守りつつ、常に新しい挑戦を続けています。

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