永泉寺 (多治見市)

永泉寺の概要

永泉寺は、岐阜県多治見市池田町に位置する曹洞宗の寺院です。石堂山を山号とし、古くからこの地で信仰を集めてきました。

歴史

永泉寺の創建は、奈良時代にまで遡ると伝えられています。光明皇后の勅願により、行基菩薩が華厳宗の寺院として開山し、一山五箇寺を配置して仏道修行の道場としたのが始まりとされています。行基菩薩は、千手千眼観世音菩薩立像を彫刻し、本尊として安置しました。この寺は可児道場と名付けられ、明圓寺、地蔵院、蓮華院、佛光院、観音院の五つの寺院が立ち並び、池田五山として隆盛を極めました。

夢窓疎石が明圓寺に3年間滞在し、虎渓山を発見して永保寺を建立したという伝承も残っています。その後、寺は衰退しましたが、鎌倉時代に僧の宗憲が明圓寺と地蔵院を合併し、真言宗の密教寺院として再興しました。

江戸時代に入ると、寺は再び衰退に向かいましたが、寛永年間に蓮華院が曹洞宗の僧である周呑によって再興されました。周呑は三河武士の小池道空と共に尽力し、住吉神社の東にあった蓮華院を移転再興し、石動山 永泉寺と改名しました。開山には、名古屋の善篤寺六世である祐鷲が迎えられました。また、寛文年間には、名古屋の善篤寺の雲山によって中興され、曹洞宗の寺院としての基盤が確立されたという説もあります。

佛光院と観音院は、永泉寺が曹洞宗に改宗した後に合併・再興され、佛光観音寺となり、永泉寺の末寺として明治初年まで存続しました。明圓寺は地蔵院を吸収して明圓寺としましたが、その年代は不明です。神仏習合の真言宗の寺院でしたが、慶応4年（1868年）の神仏分離令により、仏像等を永泉寺に渡し、廃寺となりました。天保14年（1843年）には、総門が建立されています。

指定文化財

永泉寺には、池田五山の本尊として祀られていた仏像が移され、現在に伝えられています。特に有名なのは、以下の仏像です。

聖観音菩薩像：永泉寺の本尊であり、寄木造玉眼嵌入半金色像です。身体は金色、袈裟纏衣は彩色で、南北朝時代または室町時代初期の作風とされています。かつては佛光院の本尊でした。大正3年（1915年）に国宝に指定され、昭和25年(1950年)に文化財保護法により重要文化財に指定されました。
十一面観音菩薩坐像：元は観音院の本尊で、鎌倉時代の作です。多治見市の文化財に指定されています。
千手千眼観世音菩薩立像：元は地蔵院の本尊で、鎌倉時代の作です。多治見市の文化財に指定されています。
愛染明王坐像：元は地蔵院に安置されていた仏像で、室町時代の作です。多治見市の文化財に指定されています。

これらの仏像の他にも、以下の仏像が永泉寺に安置されています。

聖観世音菩薩（永泉寺本尊）
十一面観世音菩薩（元・明圓寺本尊）

境内

山門をくぐると、本堂の右前方に、巨大なイチョウの木がそびえ立っています。このイチョウは多治見市の天然記念物に指定されており、その圧倒的な存在感に目を奪われます。境内には、多くの古い石仏が点在しており、歴史の重みを感じさせます。本堂の西北には、「可児古道場」の額を掲げた御堂があり、かつての道場の面影を伝えています。

参考文献

『多治見市史 通史編　上巻』　第二章　 古代　第六節　古代の宗教　(二)真言宗　可児道場　p226～p227　多治見市　1980年
『多治見市史 通史編　上巻』　第七章　 宗教と寺社　第三節 寺院　永泉寺　 p753～p754　多治見市　1980年
* 『岐阜県百寺』 永泉寺　p170～p171　郷土出版社　1987年

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