永保寺

虎渓山 永保寺

永保寺は、岐阜県多治見市虎渓山町に位置する臨済宗南禅寺派の寺院です。山号を虎渓山と称し、南禅寺塔頭の正的院の末寺にあたります。この寺は、雲水の修行道場である虎渓山専門道場を併設していることでも知られています。

歴史

永保寺の歴史は、鎌倉時代末期に遡ります。1295年頃、夢窓疎石と元翁本元が鎌倉で修行を重ね、土岐頼貞との出会いが生まれます。1311年、夢窓疎石は修行のため甲斐の龍山庵に一時隠棲しましたが、翌年、元翁本元とともに元翁の故郷である三河の大徳寺に滞在しました。

1313年、土岐頼貞の招きにより、頼貞の父である土岐光定の三十三回忌が定林寺で執り行われました。その後、長瀬山の麓に元翁本元、不二■門、祖用らと共に庵を結んだのが、永保寺の始まりとされています。

1313年6月18日、夢窓一行が長瀬山を目指す途中で道に迷い、白馬に乗った女性に道を尋ねるも返答がありませんでした。そこで夢窓は歌を詠むと、女性は返歌して姿を消し、付近の岩上に観世音菩薩像が現れたと伝えられています。この観世音菩薩像を本尊として、1314年に水月場（観音堂）が建立されました。

当初は「古渓」と称していましたが、後に中国廬山の虎渓に因み「虎渓山」と改められました。夢窓疎石が廬山に渡航した記録はありませんが、鎌倉建長寺で中国僧から禅を学んだことから、廬山の禅修行の雰囲気を虎渓山に求めたと推測されています。

1317年、夢窓は京都の北山へ隠棲し、後に土佐、鎌倉へと移り、1325年には南禅寺の住持となりました。一方、元翁本元は虎渓の地を守り、1329年には南禅寺の住持となっています。

元翁本元が南禅寺にいる時、後醍醐天皇の皇子・世良親王の帰依を受けましたが、親王の死後、後醍醐天皇は親王の御所を臨川寺とし、元翁本元を開山として迎えました。当初は夢窓疎石が開山でしたが、南北朝の争乱により後醍醐天皇が隠岐に流され、元翁本元と臨川寺は外護者を失いました。1331年、元翁本元は南禅寺を去り、翌年に没します。

1333年、後醍醐天皇は京都に戻り、夢窓疎石を再び南禅寺の住持に迎えるとともに、臨川寺の開山としました。これにより、当初夢窓疎石を開山とした虎渓山永保寺は、夢窓疎石を開創とし、元翁本元を開山とするようになりました。

1339年、永保寺は北朝の光明天皇の勅願所となり、経済的基盤を確立し、元翁本元の門派が継承する独立した寺院となりました。

永保寺の歴代住職は、3世の果山正位から14世の雪庭永立までが塔頭の保寿院世代と同一で、その後320年間は塔頭寺院による輪番で護持されてきました。

1830年、開山仏徳禅師500年遠諱の際に僧堂が開かれましたが、明治初期の社寺上知令により衰退しました。1879年、永保寺独住1世として保寿院24世の蕙芳惠薫が任命され、1881年に僧堂が再開されました。これ以降、僧堂師家が永保寺住職を務めています。

境内

観音堂（国宝）

観音堂は、1314年に創建された本堂で、唐様建築と和様の折衷様式が特徴です。一重裳階付きの方五間重層屋根入母屋造檜皮葺の仏殿で、「水月場」とも呼ばれます。内部には本尊の聖観世音菩薩坐像が安置されています。禅宗様の要素が強い一方で、床は板床、天井は板張りの鏡天井とするなど、和様の要素も取り入れられています。

開山堂（国宝）

開山堂は、1352年に創建された唐様建築で、夢窓疎石と元翁本元の頂相が安置されています。祠堂、礼堂、合の間が一体となった構造で、霊廟建築の基礎となりました。祠堂には元翁本元の墓塔である石造宝篋印塔が安置されています。昭堂は禅宗様式で、柱と柱の間にも密に組物を配し、本格的な禅宗様の意匠がみられます。

六角堂

六角形の建物で、創建時期は不明です。本尊の地蔵菩薩は鎌倉時代の作とされています。

文化財

国宝

観音堂
開山堂 附:石造宝篋印塔

重要文化財

絹本著色千手観音図（宋）

名勝

永保寺庭園

県指定文化財

木造聖観世音菩薩坐像
塑造僧形坐像（伝・仏徳禅師像）
釈迦涅槃図
夢窓国師筆「春帰家」
仏徳禅師筆「仏鑑」
仏徳禅師筆「吹毛不曽動」
仏徳禅師筆遺偈
虎渓山1号古墳

市指定文化財

十六善神図
千躰地蔵
古位牌群
陶製燈篭
虎渓山4号古墳
虎渓山自然林
シデコブシ群生地
イチョウの木
虎渓山永保寺文書

塔頭

登僊嶺 保壽院：永保寺三世の果山正位によって開かれました。江戸時代に荒廃と再興を繰り返しています。
東雲峰 続芳院：永保寺三世の果山正位の法孫の玉霄正賝の開山です。当初は「続芳庵」と称し、嘉永年間に焼失しましたが、明治時代に再興されました。
慈雲峰 徳林院：永保寺三世の果山正位の法孫の天霖正濡の開山です。本堂の毘沙門天尊像は、開運祈祷仏として知られています。

末寺

上記の塔頭寺院の他に、以下の寺院が末寺として名を連ねています。

保壽院別院（岐阜県多治見市十九田町）
奥蔵寺（岐阜県多治見市上野町）
普門寺（岐阜県多治見市大針町）
永見寺（岐阜県瑞浪市山田町）
荘福寺（岐阜県養老郡養老町高田）
政松寺（愛知県瀬戸市）
大徳寺（愛知県新城市鳳来町）
賢居院（愛知県新城市鳳来町）

虎渓山三六景

永保寺の境内とその周辺には、「虎渓山三六景」と呼ばれる景勝地があります。

その他

2003年に火災で本堂などが焼失しましたが、2007年に庫裏、2011年には方丈華藏庵と大方玄関が再建されました。

所在地

岐阜県多治見市虎渓山町1-40

交通機関

JR中央本線・太多線 多治見駅から東鉄バス「虎渓山」下車、徒歩約10分

周辺

虎渓公園
岐阜県東濃西部総合庁舎
カトリック神言修道会多治見修道院
虎渓町

関連項目

日本百名橋 - 無際橋
白雲山清昌寺
石堂山永泉寺
象王山普賢寺
青龍山長福寺
南禅寺

参考文献

『多治見市史 通史編 上』
『岐阜県百寺』
『土岐市史 1 (原始時代-関ケ原合戦)』
『週刊朝日百科 日本の国宝』

外部リンク

虎渓山永保寺
花園大学　国際禅学研究所　臨済宗五山派・美濃虎渓山永保寺の中世

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