華厳宗

華厳宗について

華厳宗（けごんしゅう）は、中国の大乗仏教から発展した宗派で、杜順によって創設されました。主要な経典として『大方広仏華厳経』、通称『華厳経』があり、これに基づいて独特な教学体系を構築しました。この宗派は、日本、韓国、そしてベトナムに広まり、特に日本では738年に審祥によって伝えられました。

日本の華厳宗は、南都六宗の一つとして位置づけられており、東大寺の盧舎那仏像、通称奈良の大仏がその象徴的な存在です。華厳宗の本尊である毘盧遮那仏は、歴史を超えた絶対的存在として崇拝されており、「十地品」に見られる菩薩の修行の段階や「入法界品」に描かれた善財童子の遍歴などが特に有名です。華厳宗は、日本仏教の初期の時代においても重要視されましたが、独自の教義を持つためか、次第に衰退していきました。

過去の伝承

華厳宗の歴史をたどると、最初の開祖杜順（557年-640年）から始まり、第2祖は智儼（602年-668年）、第3祖は法蔵（643年-712年）、第4祖は澄観（738年-839年）、そして第5祖は宗密（780年-839年）と続きます。このような伝承は、2世紀頃のインドの馬鳴（アシュヴァゴーシャ）や龍樹（ナーガールジュナ）を加えて七祖と呼ばれることもあります。また、朝鮮半島の古代新羅においても義湘によって広められ、この宗派の影響を与えました。

日本における華厳宗は、法蔵の弟子である審祥によって736年に普及しました。審祥は金鐘寺（後の東大寺）に招かれ、『華厳経』や『梵網経』に基づく講義を実施し、その教えが東大寺盧舎那仏像の建立につながります。鎌倉時代には、明恵が密教思想を取り入れ、凝然が教学を深化させました。そのため、華厳宗は法相宗や律宗とともに南都六宗の一角を成し、十三宗五十六派の中でもひと際特徴的な存在となりました。

教義の核心

華厳宗の思想の中心は、「重々無尽の縁起」と呼ばれる概念です。これは世界の本質は具体的な事物が互いに影響し合い、無限に重なり合っているという考え方です。この思想は、四つの法界に分けられます。私たちが通常考える事法界と、仏の世界の無自性・空の見方である理法界です。この二つが調和すると、理事無礙法界に至ります。これは、天台の理論と比較すると、より統一的な視点を持っています。

また、華厳宗は仏の視点から物事を捉え、三性説においても独自の解釈を持ちます。仏になることを目指すのではなく、最初から仏の立場で考え、行動することが重要です。華厳経の「十地品」において、菩薩の初地での信不退転の状態が強調され、その後の成就は自然に達成されるとされています。信仰の初めの一歩、それが華厳思想におけるカギとなります。

仏性の考え方

また、華厳宗の仏性については、性起説を採用し、全ての衆生にはもともと円満な仏性が既に備わっていると教えています。これは、自己の内にある真理を信じることができず、迷いに陥るという見解です。対して天台宗では、外来の仏性により救われるとする性具説が展開されます。華厳経は、この教義において特に重要な位置を占め、仏が悟ったままの言葉を記録したもので、一般の人々には理解しづらい教えとして位置付けられています。

著名な管長

華厳宗には多くの著名な管長がいます。例えば、清水公照、平岡定海、森本公誠、そして現職の狹川普文などがその例です。彼らは宗教活動を通じて、華厳宗の教えを広め、現代社会における宗派の役割を果たしています。

このように、華厳宗はその独特な教義と歴史を持つ仏教宗派として、過去から現在に至るまで多くの人々に影響を与え続けています。

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