永浜宇平

永浜宇平の生涯と業績

永浜宇平（ながはま うへい、1880年9月26日 - 1941年6月12日）は、京都府北部の丹後地方に生まれ、超人的とも称される量の郷土史研究を行った日本の郷土史家です。彼は、農業に従事しながら、故郷での歴史の保存や研究を生涯の仕事としました。その結果として、13,000頁にも及ぶ文献を残した宇平の足跡は、丹後の地域史と文化に深い影響を与えました。

幼少期と教育

宇平は、京都府中郡三重村の農家に二男として誕生しました。文字や絵を描くことを好む子供時代を送りましたが、12歳の時に描いた仏画に対する侮辱的な経験から、それを禁じます。しかし後に再び絵の魅力に取りつかれ、自らの作品を残すようになります。小学校卒業後は、独学で勉強を続け、特に数学を学び、地域の数学講習会で講師を務めるまでに成長しました。

彼の知的な成長に最も大きな影響を与えたのは、井上円了との出会いでしょう。井上のもとで短期間ですが学んだことで、彼の思想に刺激を受け、以降の研究の基盤となりました。

地元での活動

宇平は1912年から1914年にかけて三重村の役場で働いています。この時期に、故郷の歴史に興味を持ち始め、村誌の編纂を進めました。特に、1568年に建立された立石大逆修塔への調査が契機となり、彼の郷土史研究は本格化します。自らの故郷を理解し愛することから、郷土研究への出発点が生まれたと言えます。

彼はその後、各地の神社や寺院の復興に尽力し、1916年には岩屋寺を再建しました。さらに、地元の農業や環境問題にも深く関わり、その様子は彼が地域に寄り添った存在であったことを示しています。特に小作農業者たちの権利擁護のための活動や、地元の入会山林裁判の先頭に立ったことは、彼の社会的な情熱を表すエピソードです。

郷土史は大作の執筆

宇平は1922年、彼の10年に及ぶ努力の成果である『三重郷土志』を発刊しました。この作品は、三重村の歴史や文化をまとめたものであり、後の多くの刊行物の基礎を築くこととなります。その後、与謝郡やその他の町村誌の編纂にも携わり、最終的には10冊以上の郷土誌を出版することに成功しました。

また、彼は地域の歴史や文化に関する多数の論文を執筆し、活動の幅を広げました。特に、『丹後地震誌』では、1927年に発生した地震に関する詳細な研究を行い、この地域の地震史を深く掘り下げました。

晩年と評価

宇平は、1932年に自伝『言行三束』を刊行し、彼の考えや郷土に対する思いを綴りました。しかし、戦争の影響を受け、晩年には多くのプロジェクトが中断されます。それでも彼は、多爾波郷土史壇会を設立し、郷土史の普及と研究の場を作り続けました。1941年、彼は文殊堂で調査中に心筋梗塞で倒れ、79年の生涯を閉じます。

結び

永浜宇平は、地域の歴史保全や研究活動において、他者にはない情熱を持って取り組みました。彼の功績は、単に通り過ぎた時間の記録にとどまらず、後世にわたる地域の文化の礎を築いた点で、その意義は極めて大きいと言えるでしょう。他の地域でも郷土史研究が行われていますが、彼のように身をもって地域と向き合う姿勢を示した人は数少ないのです。

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