永続革命論

永続革命論：トロツキーの革命理論

ロシア革命期に台頭したレフ・トロツキーの革命理論である「永続革命論」は、後進国における革命のあり方をめぐる、レーニンとの激しい論争の中心に位置する重要な概念です。本稿では、永続革命論の核心、レーニンとの対比、歴史的影響について詳細に解説します。

レーニンとの相違点：二段階革命論 vs. 永続革命論

レーニンは、ロシア革命をブルジョア民主主義革命とプロレタリア社会主義革命の二段階に分けました。まず帝政を打倒し、その後社会主義革命へと移行するという考え方です。これに対し、トロツキーは後進国においては、ブルジョアジーが民主主義革命を主導する力を持たず、プロレタリアートがその役割を担うと主張しました。つまり、民主主義革命と社会主義革命は同時進行的に、途切れることなく起こる、という「永続」的な革命を提唱したのです。

後進国における革命：複合的発展の法則

トロツキーは、後進国が先進国と同一の道を辿るのではなく、先進国の技術や思想を吸収することで飛躍的な発展を遂げることが可能だと考えました。これを「複合的発展の法則」と呼び、後進国におけるプロレタリアートの主導性を裏付ける根拠としました。後進国では、ブルジョアジーはプロレタリアートへの恐怖から民主主義革命を推進する力を持ちえず、プロレタリアートが民主主義革命と社会主義革命を同時に推進しなければならないという論理です。

二月革命とレーニンとの協力

二月革命後、レーニンは当初の二段階革命論を修正し、即座の権力掌握を主張する「四月テーゼ」を発表しました。この急転直下の主張に、レーニンの同志たち、特にカーメネフやジノヴィエフらは反発しましたが、トロツキーだけはレーニンの主張を支持しました。このことで、レーニンとトロツキーは協力関係を構築し、ロシア革命を主導していくことになります。レーニンは、古参ボリシェヴィキの疑念をよそに、トロツキーを信頼し続けたとされています。

スターリンによる批判と歪曲

レーニンの死後、スターリンはトロツキーの永続革命論を「極左主義的で反レーニン的」と批判しました。これはトロツキーの思想を歪曲したものであり、トロツキーは実際には革命戦争派やボリシェヴィキ左派と激しく対立していたという指摘もあります。スターリンによる批判は、権力闘争におけるトロツキー排除のための政治的プロパガンダの側面が強かったと言えるでしょう。

永続革命論の本質：一段階革命論か？

永続革命論は、民主主義革命から社会主義革命への移行を中断なく推進するという主張です。プロレタリアートが革命の主導権を最初から握るという意味では「一段階革命論」と捉えることもできますが、革命の内容は「民主主義的任務」から「社会主義的任務」へと移行する「二段階」であるという点も忘れてはなりません。

歴史的影響と現代的解釈

永続革命論は、世界革命の展望を示した理論であり、その後、多くの革命運動に影響を与えました。しかし、その適用は必ずしも成功したわけではなく、歴史的文脈や具体的な状況に応じた多角的な理解が求められます。現代においても、後進国における開発や社会変革を考える上で、永続革命論が示唆する問題意識は、依然として重要な意味を持つと言えるでしょう。

参考文献

レフ・トロツキー「永続革命論」
レフ・トロツキー「結果と展望」
レフ・トロツキー「ロシア革命史」
レフ・トロツキー「中国革命論」

もう一度検索