永遠の1/2 (小説)

『永遠の1/2』

『永遠の1/2』は、佐藤正午による日本の小説であり、1987年に映画化もされた作品です。佐藤のデビュー作として知られ、1983年に第7回すばる文学賞を受賞しました。この小説は、長崎県西海市を舞台にしており、佐藤が住んでいた佐世保市をモデルとした架空の都市です。以後、彼の小説ではこの市がしばしば舞台として使用され、特にその地域の特色が色濃く描かれています。2005年には、実際に長崎県内に同名の市が設立されました。

物語の主人公は28歳の独身男性「ぼく」（田村宏）で、彼の心の葛藤や人間関係が、一人称視点で描かれています。はじめは婚約者との別れや市役所を辞職したことで、人生に迷いを感じている彼が、競輪場で偶然出会った小島良子と関係を深めていく様子が描かれます。しかし、彼の生活は一変し、ヤクザに絡まれたり、見知らぬ女子高生に助けを求められたりすることで、思いもよらなかった事態が展開します。主人公は、自分に似た人物が社会で悪事を働いていることに気付くことで、多くの謎を解くことになります。

1987年には、根岸吉太郎が監督を務め、時任三郎と大竹しのぶが主演を務めた映画版『永遠の1/2』が公開されました。映画は全て長崎県佐世保市でロケーション撮影されており、その土地の雰囲気が映像に表現されています。

キャストには、ぼく役の時任三郎をはじめ、小島良子を演じる大竹しのぶ、北村いづみ役の中嶋朋子、ぼくの妹役の小林聡美など、多彩な顔ぶれが揃っており、脇を固める俳優たちも名演技を見せています。映画の製作はディレクターズ・カンパニーによって行われ、配給は東宝が担当しました。

撮影は1987年の早い段階から始まり、根岸監督らはまず、佐世保市での撮影が可能かどうかの調査を行いました。特に、佐世保競輪場などの重要なロケ地を訪れるなど、地元の特性を活かすことに力が注がれました。また、撮影には2000人以上のエキストラが動員され、特に競輪場のシーンでは、多くの人々が参加することになりました。競輪の開催日に合わせて撮影が行われたことで、現場は非常に活気に満ちていました。

映画制作の裏側には、さまざまなドラマもありました。例えば、豪雨や雪といった天候の影響で撮影に困難が生じたり、エキストラの動員に苦労したりする場面も見られました。しかし、地元の人々の協力を得ながら、作品は形になっていき、最終的には1987年11月21日に公開されました。

本作の特徴の一つは、日常生活の中に潜む小さな謎や感情の動きを丹念に描いている点です。原作では女子高生の北村いづみはびっこの設定でしたが、映像化に際し、その描写は変更されています。また、大竹しのぶの独特な演技が印象的で、彼女の涙を流すシーンでは、観客の心に深く響く感情表現が見られます。

『永遠の1/2』は、小説としての深さだけでなく、映画としての視覚的な魅力も兼ね備えた、佐藤正午の代表作です。日常に潜むミステリーと人間ドラマを織り交ぜながら、観る者に深い印象を与える作品へと仕上げられています。

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