汚名

映画『汚名』(Notorious)の概要

1946年に公開された『汚名』は、著名な監督アルフレッド・ヒッチコックによるスパイ映画です。本作は、戦後のブラジルを舞台に、ナチス残党を追う米国諜報員と、それに協力する素人女性の物語を描いています。主演にはケーリー・グラントとイングリッド・バーグマンが起用され、彼らの演技は物語を一層魅力的にしています。

ストーリー

物語は、ドイツ出身の父親がナチスのスパイであったことで社会からの非難にさらされるアリシア・ヒューバーマンを中心に展開します。アリシアはFBIエージェントのT・R・デヴリンに接触され、彼からナチ党関係者の情報収集を手伝うよう依頼を受けます。当初は反発していたアリシアも、米国への愛国心から協力することを決心します。

デヴリンとアリシアは、任務を通じて次第に愛し合うようになりますが、彼らの前に立ちはだかるのは、ナチスの有力スポンサーであるセバスチャンという男です。アリシアは彼にハニートラップを仕掛けるという任務を受け入れることになり、動揺するデヴリンと、アリシアの愛国心との間で引き裂かれる心情が描かれます。

アリシアが情報を集める中、セバスチャンが彼女に求婚することとなり、アリシアは婚約の昭和を複雑な心境で迎えることになります。デヴリンはその状況を黙認しますが、このことがアリシアの心に深い失望感を与えます。

最近のルートに対する疑念から、アリシアとデヴリンはセバスチャンの屋敷に潜入する計画を立てます。新妻の披露パーティを利用し、デヴリンはアリシアの友人として彼の屋敷に招待されます。その結果、彼らはセバスチャンの屋敷のワインセラーで何か不審な物が保管されていることを発見します。この不審物は後にウラン鉱石であることが判明し、ナチスの陰謀を暴く重要な手掛かりとなります。

しかし、セバスチャンはアリシアがスパイである可能性に気付き、母親と共謀して彼女を毒殺する計画を立てます。徐々に体調が悪化していくアリシアは、デヴリンの心配を拒み続け、二人の間には緊張感が高まっていきます。結末では、デヴリンはアリシアを救うために奔走し、ついに二人は互いの愛を確認し合う瞬間を迎えます。しかし、彼らの生活を脅かすナチスの影が色濃く残り、二人は逃げなければなりません。

評価と影響

本作は、ヒッチコック独自の演出スタイルや、主役の二人による卓越した演技が高く評価されており、映画史に残る名作とされています。Rotten Tomatoesでは98%の高評価を獲得し、Metacriticでは満点の評価を得ています。

エピソード

撮影当時、アメリカではキスシーンに制限があったため、ヒッチコックは創意工夫を凝らし、短いキスを繰り返すことで長大なキスシーンを実現しました。また、主演の二人はその後、1958年の映画『無分別』でも再共演しています。

『汚名』は、単なるスパイ映画としてだけでなく、愛と裏切り、贖罪をテーマにした重厚な作品として位置づけられています。ヒッチコックの手腕により、観客は緊迫したドラマと共に、深い感情に触れられることでしょう。

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