江口憲一

江口憲一（えぐち けんいち）

江口憲一は1947年6月9日生まれの日本の特撮映画撮影監督であり、東京都出身です。日本の映画界における特撮技術の発展に寄与した重要な人物です。彼は東京写真大学を卒業後、最初に日本テレビ報道部でカメラマンとして働きました。しかし、行政関連の会議の報道が中心の仕事に面白みを感じられず、写真に対する探求心を持つようになります。これにより、彼は自己の思索を深めるためにインドを半年間旅しました。

1973年にテレビ業界を退職し、フリーランスの道を選びました。以降、テレビドラマの撮影助手としての活動を経て、1974年に東宝映像に入社。特撮映画の撮影に関わるようになり、1974年の『ノストラダムスの大予言』でそのキャリアが大きく動き出しました。この作品を皮切りに、1976年の『大空のサムライ』から特撮監督の川北紘一の下で特撮班のチーフカメラマンを担当しました。特にゴジラシリーズにおいては、川北監督が関わらなくなった後も『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』（2003年）までその撮影に参加し続けました。

江口氏の撮影手法は非常にユニークで、多様なアイデアを駆使していました。怪獣映画では、怪獣の視点に合わせた主観撮影を多く用い、カメラを大きく振動させるために、自らも怪獣の動きに合わせて大きく踏み歩くスタイルを採用しました。加えて、彼は独自に開発した振動装置を使って地響きの効果を創出するなど、視覚的なリアリズムを追求しました。また、危険なカメラワークにも果敢に挑戦し、大プールでの撮影中にカメラごと落下した際も撮影を続行しようとしたことから「ダイハード・江口」と呼ばれるようになりました。『ゴジラvsビオランテ』では、イカダが急停止して水に沈んでしまうアクシデントも経験しました。

ミニチュアセットの撮影における照明効果の管理も重視し、黒のスプレー塗料を使用して影を強調する技法を編み出しました。さらに、デジタル合成が主流となった平成モスラシリーズでは、ピアノ線をフォトショップで消す作業も自ら行うなど、最新技術にも積極的に取り組みました。デジタル技術の進展によりカメラでの映像確認が容易になったことについて、彼は現場のスタッフが映像をリアルタイムで確認できるようになったことを高く評価しつつ、一度OKを出したものについては再確認を行わないという意見を持っていました。

江口憲一はその功績により、多くの賞を受賞しています。1988年には第11回日本アカデミー賞で特別賞特殊技術賞を受賞し、1993年には第47回映像技術賞で特殊技術賞を受賞しました。彼の作品は日本映画の特撮面での重要性を体現しており、今なお多くのファンから支持されています。江口憲一の作品や撮影技術は、特撮映画の魅力を広める一助となっています。

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