江坂

江坂（えさか）

大阪府吹田市の南西部に位置する江坂は、大阪市高速電気軌道（Osaka Metro）御堂筋線と、そこから直通運転を行う北大阪急行電鉄南北線の結節点である江坂駅を核とする広範な地域を指します。一般的には江坂駅を最寄りとする一帯が江坂と呼ばれ、千里丘陵の南麓から南西麓にかけて広がっています。この地域は、いずれも天井川である糸田川と高川に挟まれた比較的低い土地に形成されています。吹田市の行政上の地域区分では、江坂町の一丁目から四丁目、江の木町、垂水町の一丁目から三丁目、豊津町、広芝町、芳野町が「豊津・江坂地域」として位置づけられています。ただし、豊津町は江坂駅の西側に位置し、地域の東端にある阪急千里線豊津駅とは異なる場所である点に注意が必要です。また、江坂町五丁目は名神高速道路の北側にあたり、「千里山・佐井寺地域」に分類されています。さらに、糸田川を越えた東側の南金田や金田町にも「江坂」の名前を冠した施設が見られますが、垂水町の一部などでは豊津駅が最寄りとなるため、「江坂」の名を冠する施設は少なくなります。

交通網においては、江坂は重要な結節点です。大阪市都心部へ直結するOsaka Metro御堂筋線と北大阪急行が接続する江坂駅は、多くの通勤・通学客が利用するターミナル機能を持っています。また、地域の中心部では、大阪都心部と北摂地域を結ぶ主要幹線道路である国道423号（新御堂筋）と、大阪市内を環状に結ぶ国道479号（内環状線）が交差しており、道路交通においても重要な地点となっています。幹線道路以外の地域内の道路は比較的狭い道が多くなっています。

江坂の歴史は古く、平安時代にはすでに摂津国豊島郡の地名として記録が見られます。鎌倉時代から戦国時代にかけては、「榎坂郷」と呼ばれる荘園の一部を構成していました。かつては「榎坂」と表記されており、現在でも一部の施設にその名残を見ることができます。江戸時代には榎坂村として存在し、寺田村と蔵人村という二つの枝郷を持っていました。戦後しばらく、江坂を含む千里丘陵の南西側は、南東に東海道本線、西に阪急宝塚本線、北に阪急箕面線といった主要路線が通る地域と比べて交通の便が少なく、市街化は遅れていました。しかし、1960年代から1970年代にかけて、南吹田や江坂での土地区画整理事業が進められ、地域の基盤が整備されました。決定的な転機となったのは、1970年に開催された日本万国博覧会です。万博に合わせて地下鉄御堂筋線の延伸と北大阪急行の敷設が行われ、新御堂筋と内環状線の整備も進みました。これらのインフラ整備により、千里ニュータウンに近接する地域として開発が加速し、人口が急増しました。多くの大企業が本社や大阪支店を構えるようになり、大阪の副都心として急速な発展を遂げました。

現在の江坂は、多様な都市機能が集積した活気あるエリアです。多くのオフィスビルが立ち並び、TISやエースコック、ダスキン、SNKといった有名企業の拠点があります。特にSNKは、代表的な対戦格闘ゲーム「ザ・キング・オブ・ファイターズ」シリーズに江坂をモチーフにしたステージやBGMを登場させており、ゲームファンには馴染み深い地域です。また、大規模小売店舗やコンビニエンスストアが充実しており、ハンズが関東以外で初出店した店舗を構えるなど、商業施設も豊富です。外食産業も盛んで、ミスタードーナツの事業本部がミュージアムと共に置かれているほか、回転寿司のあきんどスシローやファミリーレストランのフォルクス、トマトアンドアソシエイツなど、様々な店舗が集まっています。一方で、再開発が進んだ駅周辺のビジネス・商業エリアから一歩離れると、昔ながらの一戸建てやアパートが立ち並ぶ住宅地も広がっており、都市的な景観と生活空間が混在しています。都心へのアクセスが良いことに加え、周辺に大学や専門学校、予備校が点在していることもあり、若い世代を中心に人口増加が続いています。生活を支える公共施設も整っており、江坂公園や吹田市立江坂図書館、市役所の出張窓口である江坂市民サービスコーナーなどが利用できます。かつては多くの金融機関が軒を連ねていましたが、その数は減少しつつも、主要銀行や信用金庫の支店、近年進出した地方銀行などが営業しています。地域内には、素盞嗚尊神社（江坂神社）や油掛地蔵尊、甘露山法泉寺といった寺社もあり、古くからの歴史も感じられます。ユニークな施設としては、ライブハウスESAKA MUSEや、様々なイベントに利用されるアメニティ江坂などがあります。都市化が進む中でも、驚くことにビルやマンションの合間に僅かながら水田や畑が残っている場所も見られ、江坂の多様な側面を物語っています。なお、江坂駅周辺の約400メートル四方は、吹田市の条例により喫煙禁止地区に指定されており、歩きたばこやポイ捨て対策が行われています。

交通の利便性と多様な機能が集まる江坂は、働く場所、住む場所、そして訪れる場所として、現在も発展を続けています。

もう一度検索