江戸 (鉄道車両)

ジョイフルトレイン「江戸」：和の趣と洋の快適さを融合した特別な空間

「江戸」は、1986年から2000年まで国鉄・JR東日本で活躍したジョイフルトレインです。12系客車を改造し、和のテイストを取り入れつつ、洋風の快適さも追求した特別な車両として、団体旅行やイベント輸送で人気を博しました。

開発の背景

当時、各地の鉄道管理局では、趣向を凝らしたジョイフルトレインが登場していました。東京南鉄道管理局でも、スロ81形という和式客車を運用していましたが、更なるサービス向上を目指し、新たな和式客車の開発に着手しました。それが「江戸」です。

車両構成

「江戸」は6両編成で、両端の1号車と6号車はスロフ12形800番台、中間の2号車から5号車はオロ12形800番台で構成されています。改造は大宮工場（現・大宮総合車両センター）が担当し、各車両には東京下町の地名から取られた愛称が付けられました。全車両がグリーン車扱いでした。

1号車：スロフ12 825「鳥越」 - 定員32人
2号車：オロ12 849「湯島」 - 定員40人
3号車：オロ12 850「深川」 - 定員40人
4号車：オロ12 851「花川戸」 - 定員40人
5号車：オロ12 852「向島」 - 定員40人
6号車：スロフ12 826「柴又」 - 定員32人

デザインの特徴

「江戸」のデザインコンセプトは、単なる畳敷きの座敷列車ではなく、和洋折衷の要素を取り入れることで、幅広い年齢層に利用してもらうことでした。外観は、青15号をベースに、赤1号とクリーム10号の帯を配し、展望室と一般客室の境界付近には、東京南鉄道管理局を示す「S」マークが大きく描かれていました。

展望室（1号車・6号車）

両端のスロフ12形には、展望室が設けられました。ソファーが配置され、大きな窓から景色を楽しめるようになっていました。窓は、サロンエクスプレス東京と同様の3枚構成の二重合わせガラスが採用され、開放感のある空間となっていました。

談話室（2号車～5号車）

中間車のオロ12形には、談話室が設けられました。L字型のソファーや洋服収納棚が設置され、くつろげる空間となっていました。客室は欄間で仕切ることも可能で、プライベートな空間としても利用できました。

活躍と引退

「江戸」は、1986年3月7日に運行を開始し、団体専用列車や臨時列車として活躍しました。根府川駅で初日の出を観覧する臨時列車「熱海初日の出号」にも使用されました。しかし、老朽化に加え、客車列車ゆえの機関車付け替えの手間、速度面でのダイヤ設定の難しさなどから、2000年3月31日をもって惜しまれつつ引退しました。

「江戸」は、短い期間でしたが、多くの人々に特別な旅の思い出を提供しました。その斬新なデザインと快適な空間は、今もなお鉄道ファンに語り継がれています。

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