江戸の六上水

江戸の六上水について

江戸時代、都市の発展に伴い水の需要が増えたことは江戸幕府にとって喫緊の課題でした。特に城下の東南部に位置する低地は湿地帯だったため、井戸を掘っても海水が混入し、質の良い水を得ることができませんでした。そのため、上水道の建設は避けて通れない必要性を持っていたのです。

江戸の六上水とは、江戸市中への水供給のために開削された主要な上水道6つを指します。最初に手がけられたのは1590年、徳川家康が関東に移封された際に開削された小石川上水（後に神田上水）です。その後、玉川上水の完成を経て、1657年の大火を受けて江戸の町が広がり、さらに四つの上水が追加されることとなりました。これらをまとめて「江戸の六上水」と呼びます。

六上水の内容

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神田上水

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玉川上水

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本所上水（亀有上水）

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青山上水

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三田上水（三田用水）

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千川上水

これらの上水道のうち、実際に江戸時代を通じて主に使われたのは神田上水と玉川上水の二つだけでした。残りの四上水は1722年に一斉に廃止されています。その理由は「中興より懸り候故」、つまり改修に多大な費用がかかるためでした。また、本所上水は特に水量が不足していることが理由で廃止されたとされています。

本所上水に関しては以前から水不足の指摘があり、残りの三上水については詳しい説明がされていないのが実情です。この廃止の提案は、儒学者の室鳩巣から幕府に提出されたものとされ、彼の意見は『献可録』という書物にまとめられています。

上水と火災の関係

上水道の存在が江戸の大火災に影響しているとの見解もありますが、実際には江戸の街は何度も大火に見舞われており、上水が火災の原因であったとは考えにくいのが現実です。室鳩巣の意見主張には根拠が薄いとの議論が多く、江戸時代を通しての江戸の街の資料を見ても、その真相は明らかではありません。

この時期、享保の改革を主導していた第8代将軍・徳川吉宗の下で、幕府は財政の立て直しのために積極的に新田開発を進めていました。特に玉川上水については、幕府直轄領が多かった武蔵野地方で新田として分水が多く開削されていったため、その結果、青山・三田・千川の三上水の水量が減少していたことが指摘されています。

幕府は政策を実行するために行われる事業の整理が必要であり、室鳩巣の無根拠な建議がその際の建前として利用されただけであったと考えられています。これらの歴史を通じて、江戸の六上水は単なる水道網にとどまらず、幕府の政治や財政の状況を映し出す重要な要素でもあったのです。

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