室鳩巣

室鳩巣（むろ きゅうそう）

室鳩巣（1658年3月29日 - 1734年9月9日）は、江戸時代中期に活躍した著名な儒学者です。本名は直清、字は師礼といい、駿台先生とも呼ばれました。

生涯

鳩巣は、万治元年（1658年）に室玄樸の子として、武蔵国谷中村（現在の東京都台東区谷中）に生まれました。幼い頃から学問に励み、寛文12年（1672年）には金沢藩に仕え、藩主前田綱紀の命により京都で木下順庵に師事しました。儒学の大家である順庵の薫陶を受け、鳩巣は着実にその才能を開花させていきます。

正徳元年（1711年）、鳩巣の才能を見抜いた新井白石の推挙により、江戸幕府に儒学者として仕えることになりました。幕府では、徳川家宣、家継、吉宗の3代にわたり、その学識をもって幕政に貢献しました。

享保19年（1734年）、鳩巣は77歳でその生涯を閉じました。彼の墓は、現在も文京区大塚先儒墓地にあります。明治42年（1909年）には、その功績が認められ、従四位が追贈されました。

業績

鳩巣は、幕府に仕える儒学者として、献策や書物の選進を通じて幕政を支えました。特に、徳川吉宗の時代には、享保の改革のブレーンとして活躍し、その政策立案に深く関わりました。また、湯島聖堂において朱子学の講義を行い、幕府の学問奨励にも尽力しました。吉宗の命により八重洲河岸に開設された高倉屋敷でも講義を担当し、多くの幕臣を育成しました。

鳩巣は、学問だけでなく、人道的な側面も持ち合わせていました。赤穂事件においては、赤穂浪士たちの行動を擁護し、彼らの処罰をめぐって意見を述べたことでも知られています。

著作

鳩巣は、数多くの著作を残しました。主なものとしては、『五常名義』、『五倫名義』、『駿台雑話』、『赤穂義人録』、『兼山麗澤秘策』、『六諭衍義大意』などがあります。これらの著作は、彼の思想や学問を今に伝える貴重な資料となっています。

駿台雑話: 江戸時代の社会や文化、人物について語った随筆。当時の生活を知る上で貴重な資料。

門下生

鳩巣の門下からは、多く有能な人材が輩出されました。中村蘭林、中根東里、河口静斎、大地奚疑、浅岡芳所、室勿軒、伊東澹斎、奥村修運、青地斎賢、青地礼幹、小谷継成、河口仲賓、児玉図南、蘆野東山などが彼の教えを受け、それぞれの分野で活躍しました。

現代における室鳩巣

室鳩巣は、現代においてもなお、その思想や業績が研究され、評価されています。彼の著作は、現代語訳や解説書が出版され、多くの人々に読まれています。また、テレビドラマや小説などの題材としても取り上げられ、その人物像が広く知られるようになっています。

演じた俳優: 北原義郎（赤穂浪士 (1979年のテレビドラマ)）、橋爪功（八代将軍吉宗）

関連事項

* 駿河台: 現在の明治大学駿河台キャンパスアカデミーコモン付近に屋敷を構えていた。

室鳩巣は、江戸時代を代表する儒学者の一人として、日本の思想史に大きな足跡を残しました。彼の学問に対する真摯な姿勢や、社会に対する貢献は、現代に生きる私たちにとっても学ぶべき点が多くあります。

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