江村哲二

江村哲二（えむら てつじ）は、1960年3月7日に兵庫県西宮市で生まれ、2007年6月11日に47歳で亡くなった日本の現代音楽の作曲家です。名古屋工業大学大学院を修了後、コニカに就職しましたが、その後音楽の道へ転身しました。金城学院大学人間科学部教授も務めました。

作曲はほぼ独学で学んだとされていますが、実際には海外の国際マスタークラスに নিয়মিত参加し、その様子をブログで公開していました。この経験が、彼の音楽に大きな影響を与えたことは想像に難くありません。江村の音楽の特徴は、バタフライエフェクトなどの自然現象を前衛的な音楽語法に取り入れた点です。工学的な視点と音楽的な感性を融合させ、独自の音楽世界を構築しました。

彼の作品は、初期から晩年まで一貫してシステマティックな思考に基づいています。しかし、晩年になるにつれて音数が減少し、よりシンプルで洗練された表現へと変化していきました。例えば、「Ryo an' G. 2」では、サックスの問いかけに対し、ギターは必要最低限の音で応じるという、静かで内省的な音楽が特徴的です。また、晩年の「ハープ協奏曲II」では、同音反復の中から音を選ぶというスタイルを貫き、最後まで独自の音楽観を追求しました。

江村は、コニカ在籍中に特許庁へ何度も出向いていましたが、多忙を理由に音楽家としての活動に専念しました。その後、大学教授として後進の育成にも力を注ぎました。彼の音楽に対する情熱は、その短い生涯を通して衰えることはありませんでした。

また、江村は多くの賞を受賞しています。1989年には現音作曲新人賞、1992年にはルトスワフスキ国際作曲コンクールで第1位を獲得するなど、国内外で高い評価を得ました。1994年には、芥川作曲賞を受賞しています。この受賞は、作曲家の武満徹の強い推薦によるものでした。さらに、1998年にはブザンソン国際音楽コンクール作曲部門で第1位を受賞し、翌年の指揮部門の課題曲に選ばれています。2007年には、作品集『地平線のクオリア』がレコード・アカデミー賞現代曲部門賞を受賞しました。

江村は、指揮者の大野和士や脳科学者の茂木健一郎と親交がありました。茂木健一郎との共著『音楽を「考える」』は、音楽に対する深い考察がなされており、多くの読者に影響を与えました。

江村哲二の作品は、全33作とされており、中には破棄された作品も存在しますが、その作品リストから撤回されています。彼の音楽は、現代音楽の新たな可能性を切り開いたものとして、今後も評価され続けるでしょう。

受賞歴

1989年：第6回現音作曲新人賞受賞（日本現代音楽協会主催）
1991年：第13回作曲賞入選（財団法人日本交響楽振興財団主催）
1992年：第2回ルトスワフスキ国際作曲コンクール第1位受賞（ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団主催）
1992年：第8回名古屋文化振興賞受賞（財団法人名古屋市文化振興事業団主催）
1993年：平成4年度文化庁舞台芸術創作奨励特別賞受賞（文化庁主催）
1993年：東京都制施行50周年記念国際作曲コンクール佳作入選（東京都主催）
1994年：第4回芥川作曲賞受賞（財団法人サントリー音楽財団主催）
1998年：第9回ブザンソン国際音楽コンクール作曲部門第1位受賞（ブザンソン国際音楽祭主催・翌年の指揮部門の課題曲へ）
2007年：作品集『地平線のクオリア』第45回レコード・アカデミー賞現代曲部門賞

著作

茂木健一郎、江村哲二『音楽を「考える」』（筑摩書房〈ちくまプリマー新書〉/2007年）

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