江津萩枝

江津萩枝（えづ はぎえ）は、1910年9月に東京・京橋で生まれ、2008年3月27日に生涯を閉じた日本の小説家です。

彼女は、女優の沢村貞子の紹介で、築地小劇場内の移動劇団「メザマシ隊」に参加し、小杉てるという芸名を名乗っていました。この経験が、彼女の後の文学活動に大きな影響を与えたと考えられます。

小説家としての江津萩枝は、特に太平洋戦争の時代と、その時代に翻弄された演劇集団をテーマにした作品で知られています。彼女の代表作の一つである『桜隊全滅』は、原爆文学としても重要な位置を占めています。この作品は、原爆によって命を落とした劇団員の悲劇を描いており、戦争の残酷さと悲しみを深く訴えかけています。また、築地小劇場時代を描いた『メザマシ隊の青春』も、当時の演劇界の様子や若者たちの情熱を生き生きと描き出した作品として評価されています。

『桜隊全滅』は、1988年に新藤兼人によって脚本・監督され、「さくら隊散る」という題名で映画化されました。この映画化によって、江津萩枝の作品はさらに多くの人々に知られることとなりました。映画では、戦争という極限状態の中で、演劇に情熱を燃やし、そして無残にも散っていった若者たちの姿が描かれています。

彼女の作品は、単に過去の出来事を記録するだけでなく、戦争が人々に与えた影響や、人間の尊厳について深く考えさせるものです。江津萩枝の文学は、戦争の悲劇を後世に伝えるとともに、平和への願いを込めた貴重な遺産と言えるでしょう。

主な著作

『桜隊全滅—ある劇団の原爆殉難記』 未来社 1980 ISBN 4624410327
『メザマシ隊の青春—築地小劇場とともに』 未来社 1983 ISBN 4624700406

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