江頭豊

江頭 豊（えがしら ゆたか）は、1908年（明治41年）1月16日に生まれ、2006年（平成18年）9月24日に98歳でその生涯を終えた、日本の実業家、そして銀行家です。特に日本興業銀行（現みずほ銀行）の常務取締役や、チッソ株式会社の社長を務めたことで知られ、後の皇后である雅子様の母方の祖父にあたります。

東京府の出身である江頭氏は、海軍中将として将来を嘱望されながらも若くして亡くなった父、江頭安太郎氏と、現・海城学園設立者である古賀喜三郎氏の娘、米子氏の間に生まれました。父・安太郎氏は佐賀県の士族出身で、海軍兵学校などを首席で卒業するなど優秀な軍人でしたが、病に倒れた際には大正天皇から侍医が送られるほどでした。

江頭豊氏は、海城中学校、旧制松本高等学校を経て、1933年（昭和8年）に東京帝国大学法科を卒業しました。大学卒業後、日本の主要な金融機関の一つであった日本興業銀行に入行しました。

日本興業銀行では、資金部、人事部、融資第三部などで要職を歴任し、銀行家としてのキャリアを重ねました。また、1955年（昭和30年）には中小企業金融公庫（現日本政策金融公庫）の理事も務めるなど、公的な金融機関での経験も積んでいます。

1958年（昭和33年）、江頭氏は日本興業銀行に戻り、取締役となります。そして1961年（昭和36年）には常務取締役に昇進し、大阪支店長も兼任しました。

1962年（昭和37年）、江頭氏のキャリアに大きな転機が訪れます。当時、日本興業銀行がメインバンクであった新日本窒素肥料（後のチッソ）は、水俣病問題による社会的な批判や、長期にわたる労働争議によるストライキで経営が極めて厳しい状況にありました。その再建を託され、日本興業銀行の中山素平頭取の意向により、江頭氏は同社の専務取締役として派遣されました。

新日本窒素肥料の立て直しに尽力する中で、1964年（昭和39年）12月には同社の取締役社長に就任します。翌1965年（昭和40年）1月には、社名を「チッソ株式会社」に変更しました。社長として江頭氏は、水俣病という深刻な問題に直面しながら企業経営を担い、また経済界の一員として経済同友会の幹事も務めました。

チッソ社長時代には、少数株主が積極的に経営に関与しようとする「一株運動」との対決が激化します。特に1970年（昭和45年）11月28日と1971年（昭和46年）5月26日に開催された定時株主総会は、一株運動の株主との応酬により大混乱を招きました。この総会の混乱の責任を取り、江頭氏は1971年（昭和46年）7月に社長の辞意を表明します。同年7月27日の取締役会で社長を退任し、会長に就任しました。その後、1973年（昭和48年）5月には会長も退き、相談役となりました。

江頭氏は、皇后雅子様の母方の祖父にあたり、また敬宮愛子内親王の曽祖父でもあります。長女の優美子氏が、後に外務事務次官や国連大使を務めた小和田恒氏と結婚し、その間に生まれたのが雅子様です。雅子様は1993年（平成5年）に皇太子徳仁親王と結婚され皇太子妃となり、2019年（令和元年）5月1日には皇后となられました。江頭氏は晩年、「愛子さまが天皇になる夢を見た」と語ったと伝えられています。

晩年は2004年（平成16年）10月から妻の寿々子氏と共に静岡県富士市の病院に入院し、妻に先立たれた後、2006年（平成18年）9月24日に98歳で亡くなりました。その生涯は、昭和の経済発展と激動、そして皇室につながる複雑な背景を持つものでした。

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