池袋演芸場

池袋演芸場：東京の小さな寄席の物語

池袋駅前に佇む池袋演芸場は、東京を代表する落語定席の一つです。都内4か所の落語定席の中でも、戦後に誕生した唯一の寄席であり、その歴史は、池袋という街の発展と深く関わっています。地下に位置する独特の空間は、かつて客足が伸び悩んだ時代には「池袋秘密倶楽部」という異名で呼ばれることもありました。近年は、落語を中心に、漫才や奇術といった色物芸も楽しめる多様なプログラムで、多くの観客を魅了しています。

歴史：映画館から落語の聖地へ

1951年、映画館「池袋ピース座」の3階で、畳敷きの小さな寄席として開場しました。その後、火災による焼失や再開発などを経て、現在の10階建てビルの地下に移転。1993年の再開場時には、全席椅子席となり、より快適な空間へと生まれ変わりました。

初期の頃は客足に苦しむ時期もありましたが、6代目三遊亭圓生会長の尽力により存続が決定。落語協会専門の定席となり、現在に至ります。再開場後は、落語芸術協会の出演も加わり、より充実したプログラムを提供しています。正月には、落語芸術協会と落語協会が交互に初席と二之席を担当するなど、年間を通して様々な顔を見せています。

プログラム：多彩な演目と個性的な企画

池袋演芸場は、毎月10日ごとに上席、中席、下席とプログラムが入れ替わります。落語芸術協会と落語協会が交互に出演し、昼の部と夜の部では演者も異なります。特に下席の夜には、「落語協会特選会」と題した日替わりの特別企画興行が行われ、独特の雰囲気と魅力を醸し出しています。祝日には、若手落語家による「福袋演芸場」も開催され、新鮮な才能に触れる機会も提供されています。

座席数は93席と、他の定席と比べてコンパクトです。そのため、人気のある落語家が出演する際には、満席となることも珍しくありません。演者の息遣いまで感じられる距離感も、この寄席の魅力の一つと言えるでしょう。

新型コロナウイルス感染症流行と対応

2020年以降は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、幾度となく休席を余儀なくされました。しかし、感染対策を徹底した上で、定員を制限したり、公演時間を調整したりするなど、工夫を凝らしながら興行を継続してきました。

出演者とエピソード

池袋演芸場には、落語協会と落語芸術協会に所属する多くの落語家が出演します。多くの落語家がここで初高座を踏んでおり、落語界の登竜門としての役割も担っています。また、過去にはオリンピック金メダリストの森末慎二が落語家として出演したこともありました。

この小さな寄席には、数々のエピソードが刻まれています。7代目立川談志が一人で客席を満員にした話や、独特の呼び声で知られた「松本のおばちゃん」という名物お茶子の存在、そして、神田伯山夫人の古舘理沙さんがかつて従業員として働いていたことなど、多くの物語が語り継がれています。

アクセスとその他

池袋駅からのアクセスも良好で、JR池袋駅北口、東京メトロ各線池袋駅からも徒歩1分圏内です。

池袋演芸場は、その歴史と伝統、そして小さな空間から生まれる独特の親密感、そして常に新しい試みに挑戦する姿勢が魅力の寄席です。これからも、多くの観客を魅了し続けることでしょう。

もう一度検索