池貝庄太郎

池貝庄太郎 (初代)

池貝庄太郎（いけがい しょうたろう、1869年11月13日 - 1934年7月28日）は、日本の明治から昭和初期にかけて活躍した実業家、技術者、工学者です。特に機械工学の分野でその才能を発揮し、日本の産業発展に大きく貢献しました。彼は、合資會社池貝鐵工所社長、東京高等工業学校教授、株式會社池貝鐵工所社長などを歴任しました。

生い立ちと初期のキャリア

池貝庄太郎は、東京府東京市本郷区妻恋町（現在の東京都文京区）で生まれました。ただし、千葉県鋸南町下佐久間が出生地であるという説もあります。父は池貝重右衛門で、池貝家はもともと安房加知山藩（現在の千葉県）の酒井家の家臣でした。

明治維新後の生活の困窮から、1882年（明治15年）に横浜の西村鉄工所（西村機械製造所）に徒弟として入りました。そこで彼は金属加工の基礎を学びました。1886年（明治19年）には、田中製作所（後の芝浦製作所、現在の東芝の前身）に移り、旋盤工として働きました。この経験を通じて、旋盤の修理を行ううちにその構造を深く理解するようになりました。

実業家としての成功

1889年（明治22年）、池貝庄太郎は弟たち4人と共に東京芝区金杉川口町に池貝工場を創業し、独立しました。同年には、国産初の英国式9フィート旋盤を2台製作しました。これは日本の機械工業における大きな一歩でした。

その後も、彼は革新的な製品を次々と開発しました。1895年（明治28年）にはスチームエンジンを製作し、1896年（明治29年）には国産初の石油エンジンを製作しました。さらに、1897年（明治30年）には石炭ガスを燃料とするガスエンジンを開発するなど、動力機関の研究開発に力を注ぎました。

1905年（明治38年）には、独自の技術を用いて池貝式標準旋盤を開発しました。これは、日本の工業界に大きな影響を与えました。

1906年（明治39年）、池貝工場を合資会社化し、池貝鐵工所として組織を拡大しました。同年には、東京高等工業学校（現在の東京工業大学）の教授に就任し、後進の育成にも貢献しました。1907年（明治40年）には、鉄道車両の製造にも進出し、事業の多角化を図りました。

1913年（大正2年）には、池貝鐵工所を株式会社化し、更なる発展を目指しました。1915年（大正4年）には、旋盤をイギリスやロシアに輸出するなど、海外進出も果たしました。これは、日本の工作機械の品質が国際的に認められた証でもありました。

1920年（大正9年）には、国産初のエアインジェクション・ディーゼルエンジンを開発し、1926年（昭和元年）には国産初の無気噴油ディーゼルエンジンを開発しました。これにより、池貝鐵工所は船舶用ディーゼルエンジンの有力メーカーとしての地位を確立しました。

池貝庄太郎は、旋盤、エンジン以外にも、国産初の印刷輪転機など、数々の工作機械、産業機械、エンジンを開発し、多くの特許を取得しました。彼の日本近代産業史における、生産技術の面からの功績は非常に大きいと言えるでしょう。

受章と晩年

1928年（昭和3年）には、その功績が認められ緑綬褒章を受章しました。1934年（昭和9年）、脳溢血と肺炎のため64歳で死去しました。墓所は青山霊園にあります。

人物像

池貝庄太郎は、敬神の念が厚く、金光教の教祖である金光大神を邸内に祀り、毎年祭典を執り行っていました。

家族

実弟の池貝喜四郎は池貝鉄工所の副社長を務めました。喜四郎の娘婿である日比谷三郎は日比谷平左衛門の孫にあたります。また、子の池貝勝雄が2代目の池貝庄太郎を襲名しています。

池貝庄太郎の業績は、日本の機械工業の発展に大きく貢献し、その名は日本の産業史に深く刻まれています。

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