沖データ

株式会社沖データ（おきデータ、英: Oki Data Corporation）は、かつて存在した日本のプリンターメーカーである。東京都港区に本社を置いていた。沖電気工業株式会社のプリンター事業を担う会社として、1994年（平成6年）に分社独立して設立された。通称は「OKIデータ」。沖電気グループにおけるプリンター製品の中核を担い、特にインパク卜プリンターと独自のLEDプリンター技術に強みを持っていた。

設立以来、インパク卜プリンター分野で確かな実績を築く一方、LEDヘッドを用いた電子写真方式のLEDプリンターの開発に注力し、独自の技術で市場からの評価を獲得した。同社のLEDプリンターは、精緻なドット描画を実現する「HDカラープリンティングテクノロジー」を特徴としていた。この技術により、微細な文字や極細線、そしてドットごとの階調表現による繊細なカラー表現が可能となった。また、用紙全体への正確なドット印字能力は、「デジタル・ドット・プリント・テクノロジー」として、特定のアプリケーション（Anoto、Val-Codeなど）に対応したプリンター開発にも活かされた。

製品開発においては、1994年の「MICROLINE803PSII」で世界初のA3ノビ用紙対応を実現。続く1996年の「MICROLINE4w」では、LED技術を活かした当時世界最小クラスの超小型プリンターを発表し、注目を集めた。オフィスのカラー化が進む中で、1998年にはOKIデータ初のカラープリンター「MICROLINE8c」を市場に投入。この製品は、以降同社が開発するカラープリンターの基盤を築いた。業務用分野では、2003年発売のインパク卜プリンター「5860SP」が、最大2.7mmまでの厚さの通帳などへの印字を可能にし、特に中国市場で広く採用された。

LED技術の発展により、2006年に発売された電子写真式LEDタンデムカラープリンター「C3400」（A4）および「C8600」（A3）は、電子写真式カラープリンターとして当時世界最小のコンパクトサイズを実現した。また、この時期には、異なる材料間での薄膜を高精度に接合する「エピフィルムボンディング技術」の実用化にも成功している。

オフィス市場向けには、2008年に新たなブランド「COREFIDO（コアフイド）」を立ち上げ、業界で初めてとなる5年間無償保証サービスを導入することで、国内市場における競争力を強化した。さらに、2012年以降に展開された「COREFIDO2」では、メンテナンス品の無償提供や、ユーザー自身でメンテナンスがしやすい「メンテナンスバリアフリー設計」を採用するなど、オフィスにおけるプリンターのダウンタイム削減や運用コスト抑制に繋がるサービスを拡充した。

プロフェッショナル印刷市場では、2013年にフラグシップモデル「C941dn」を投入。これはOKIデータ初の5色トナー対応モデルであり、高度なデザイン表現を可能にした。この分野の事業基盤を強化するため、2015年には株式会社OKIデータ・インフォテックを設立。これにより、セイコーインスツルからの事業譲渡を受けたワイドフォーマットプリンターなどの製品ラインアップを拡充した。

本社を東京都港区に置き、各地に営業支店や事業所、工場などの拠点を有していた。

本社：東京都港区
支店：北海道、東北、中部、関西、中国、九州
* 事業所・工場：福島、高崎（LED統括工場含む）

主な関連会社には株式会社エム・エル・サプライや株式会社OKIデータMESがあった。かつては、株式会社OKIデータ・インフォテック、株式会社沖データシステムズ、株式会社沖デジタルイメージングといった関連会社も存在したが、これらはいずれも後に沖データ本体に吸収合併されている。

株式会社沖データは、2021年4月1日をもって親会社である沖電気工業株式会社に吸収合併され、法人としての歴史に幕を閉じた。その技術と事業は親会社に引き継がれている。

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