沙孟海

沙孟海（さ もうかい）

沙孟海（1900年 - 1992年）は、20世紀中国を代表する篆刻家・書家の一人です。本名は文瀚（ぶんかん）で、後に文若（ぶんじゃく）と改名しました。孟海は字（あざな）であり、号は沙邨（さそん）、蘭沙（らんさ）、石荒（せきこう）、決明（けつめい）などを用いていました。

生涯

1900年、漢方医の長男として浙江省寧波市に生まれました。幼い頃から学問に励み、1914年に寧波第4師範学校に入学。在学中から、呉昌碩（ご しょうせき）の友人であった馮君木（ふう くんぼく）に師事し、中国古典文学や書道、篆刻の基礎を学びました。

1926年、王箇簃（おう かぎ）の勧めで、かねてから敬愛していた呉昌碩の門下に入り、本格的に書と篆刻の道に進みます。呉昌碩の芸術に対する姿勢や技法を深く学び、自身の作風を確立していきました。

1929年には、早くも『近三百年的書学』・『印学概論』といった書道・篆刻に関する重要な著作を発表し、その学術的な知識と才能を示しました。同年、国立中山大学預科国文学教授に就任し、後進の指導にもあたりました。

その後、1932年には中華民国教育部秘書、1949年には浙江大学中国文学部教授、1952年には浙江省文化財管理委員会常務委員など、要職を歴任しました。1963年には、浙江省美術学院（現在の中国美術学院）に書道・篆刻専門の教授として迎えられ、書道・篆刻の専門家育成に尽力しました。

1979年には、中国篆刻界における最高峰の団体である西泠印社（せれい いんしゃ）の社長に就任。1980年には、西泠書画院院長も兼任し、中国の伝統文化の継承と発展に大きく貢献しました。また、1981年には浙江省博物館名誉館長、中国書法家協会副主席に就任し、その名声は確固たるものとなりました。1982年には中国書法家協会名誉理事兼浙江分会主席。

1989年には、中国美術学院終身教授となり、生涯にわたり教育と創作活動に情熱を注ぎました。

1992年、92歳で逝去。

業績

沙孟海の書は、力強く雄渾でありながら、繊細で優雅な趣も兼ね備えていると評されます。篆刻においては、伝統的な技法を踏まえつつも、独自の解釈と表現を追求し、新たな境地を開きました。また、書道史・篆刻史の研究にも力を注ぎ、多くの著作を発表し、学術的な貢献も高く評価されています。

沙孟海の作品は、国内外の美術館や博物館に多数所蔵されており、その芸術的価値は高く評価されています。また、彼の育成した多くの書家や篆刻家が、現代中国の書道・篆刻界を支える存在となっています。

著書

沙孟海論書叢稿
沙孟海写書譜
蘭沙館印式
印学史
沙孟海書法集
沙孟海篆刻集
沙孟海真行草書集

参考文献

沙孟海『篆刻の歴史と発展　印学史』中野遵・北川博邦 共訳、東京堂出版〈篆刻叢書〉、1988年9月。ISBN 4-490-20144-3。

関連項目

* 中国の篆刻家一覧

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