沙村広明

沙村 広明（さむら ひろあき）について

沙村広明は、1970年2月17日生まれの日本の漫画家・イラストレーターで、千葉県出身です。多摩美術大学の美術学部油絵科を卒業し、1993年に『月刊アフタヌーン』でデビューしました。彼の代表作には異色の時代劇作品『無限の住人』があります。この作品によって、1997年には第1回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞しました。また、彼の妻も漫画家である岡村星です。

来歴

デビューまで

沙村は小学生の頃から漫画家を目指しており、「漫画家」以外の夢を持ったことはなかったとされています。美術学校を選んだ理由は、漫画研究部（漫研）に絵のうまい魅力的な先輩たちが多かったからです。デッサンを学ぶために美術予備校に通った後、多摩美術大学に入学しました。卒業後は油絵を専攻しながらも、漫研の活動が中心になりました。彼の大学時代の先輩には冬目景やウエダハジメがいて、後輩に玉置勉強がいます。

この時期、彼は大友克洋の影響を色濃く受けながらも、デビューの際にその影響から脱却しようと意識していたことを語っています。デビューのきっかけは、大学祭で漫研のOBの山田玲司から持ち込みを勧められたことでした。谷崎潤一郎の小説『刺青』を漫画化する形で持ち込んだ際に、歴史物を描く可能性を示唆されたことで『無限の住人』の制作につながりました。

『無限の住人』について

1993年にアフタヌーン四季賞夏のコンテストで四季大賞を受賞した『無限の住人』は、翌年から連載が始まります。当初の作品は敵を次々と倒すというアクション物でしたが、連載が進むにつれ登場人物が増え、複雑な構成へと変わりました。沙村は自らの作品に対する考え方の転機として、一ノ関圭に強い影響を受けたとしています。『無限の住人』は1997年に文化庁メディア芸術祭で優秀賞を受賞し、英語版がアイズナー賞を受賞したこともあります。この作品は全30巻で、既にアニメ化もされている人気作品です。

その他の仕事

『無限の住人』の合間に、沙村は竹易てあしという名前でコメディ作品『おひっこし』を発表しました。アシスタントを雇うことで作業効率を上げ、その結果作品が多様化しました。また、成年向け漫画雑誌に猟奇的なテーマのイラストも披露しました。2012年には『ハルシオン・ランチ』が星雲賞コミック部門にノミネートされ、2014年には『春風のスネグラチカ』で再度成功を収めています。

画風と作品に対する評価

沙村の絵は、文化庁メディア芸術祭でも高く評価されており、独特のタッチや画面描写の品格に定評があります。『無限の住人』では鉛筆描きの挿絵を用いて独自の雰囲気を演出し、漫画業界での画風の確立に寄与しました。主線はピグマのミリペンで描かれ、着物部分には筆ペンを使用するなど、手法も独特です。

趣味・嗜好

沙村は漫画、映画、小説など様々な趣味を持っており、作品にもその影響が見られます。手塚治虫や星野之宣を「心の師」と挙げ、特に谷崎潤一郎の作品が心に残っていると語っています。また、好きな映画として『ニキータ』や女囚シリーズを挙げており、これらの影響は作品に色濃く反映されています。音楽面でも多くのバンドからインスパイアを受け、特にクイーンやブラック・サバスを好むことが知られています。

沙村広明は、その独特な作品と個性的なスタイルで、日本の漫画界において重要な人物の一人として知られています。彼の影響は今後も多くの作品に引き継がれていくことでしょう。

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