沙頭角銃撃戦

沙頭角銃撃戦の詳細

沙頭角銃撃戦は、1967年7月8日の午前10時30分から午後4時15分までに発生した、香港と中国本土の間の緊張を象徴する出来事です。この事件は、武装した中国の民兵による違法越境と、香港警察との銃撃戦から成り立っています。当時、中国軍による無差別な機関銃の掃射が行われ、多くの人命が失われるという悲劇が展開されました。

事件の背景

この事件が起こった背景には、1966年に発動された中国共産党の「文化大革命」があります。この運動は香港・マカオにまで波及し、香港でも左派による活動が活発化しました。特に、1967年1月にマカオで左派勢力が政権を奪取したことが影響を与え、香港の左派も行動を起こすこととなりました。

4月には、新蒲崗の造花工場での労使紛争がきっかけとなり、局地的な暴動が発生。これが6月にゼネストへと発展し、沙頭角でも左派による抗議活動が活発化していきました。特に、6月の11日と12日には大規模なデモが行われ、警察署が包囲されるという事態も発生しました。これらの出来事が、7月の銃撃戦へとつながる緊張感を生み出しました。

事件の経過

事件の当日、午前1時から3時にかけて一部の民兵が沙頭角の警署を奇襲しましたが、香港警察はこれを無視。午前10時には約300人の民兵が火器を持って香港側に侵入し、警察署を包囲しました。警察は120名の機動隊員を派遣しましたが、中国側の民兵に対抗する十分な火力を持っていませんでした。

銃撃戦が始まると、村の人々は避難を余儀なくされ、多くの商店が閉店しました。中国側からの攻撃が続き、特に午前11時頃には中国側の民兵が住宅の屋根から機関銃を使用して、警察署に対して猛烈な攻撃を仕掛けていました。これに対抗するため、香港警察は催涙弾を用いて防御を試みました。

しかし、香港警察の武器では防ぎきれない事態が進行し、警察は1.5マイル離れた英軍の部隊に増援を求める事態に陥りました。駐港英軍は部隊を派遣するためにはイギリス本国政府の許可が必要であり、指揮官は迅速に対応できませんでした。午後4時15分には英軍の装甲車が到着し、民兵は撤退を余儀なくされました。

事件の影響とその後

この事件では、香港側からは警察官5名が死亡し、12名が負傷。一方、中国側も兵士や民兵に casualties がありました。事件後、香港政庁は直ちに沙頭角に夜間外出禁止令を発令し、国境地帯の治安維持を駐港英軍に委ねる決定を下しました。

事件は国境警備の強化や、英軍の運用に関する議論を引き起こしました。特に、英国外務省の記録によれば、当時の英軍には有事計画が不十分であったことが明らかになっています。事件によって、香港の左派運動はより過激化し、今後の抗争に影響を与えました。

沙頭角銃撃戦は、香港における中国との間の緊張の象徴であり、後の事件や問題にも影響を残すことになりました。当時の状況は、様々な文献でも取り上げられ、重要な歴史的事象として位置づけられています。また、この事件を悼むために香港独自の音楽も作られ、事件を記憶し続ける動きも存在しています。

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