沢庵和尚鎌倉巡礼記

『沢庵和尚鎌倉巡礼記』は、江戸時代前期の臨済宗の僧侶、沢庵宗彭が寛永10年（1633年）に鎌倉五山を巡拝した際の紀行文です。別題として『沢庵和尚鎌倉記』や『沢庵和尚鎌倉紀行』とも呼ばれています。

概要

この紀行文は、沢庵が鎌倉を訪れた直後ではなく、晩年に書かれたと考えられています。そのため、鎌倉の寺院の荒廃を単に記録するだけでなく、「為政者は寺に対してどうあるべきか」という主張の題材として扱っている傾向が見られます。そのため、具体的な記述は比較的少ないと言われています。

しかし、沢庵自身が生前に何度もこの紀行文を書き写し、人々に与えていたこと、そして沢庵の死後15年後の明暦5年（1659年）には版木が作られ、広く一般に流布したことから、鎌倉という場所を人々に認識させる上で非常に大きな影響力を持った書物であることは間違いありません。

諸本について

沢庵自筆の『沢庵和尚鎌倉巡礼記』は、現在3つ残っています。これらの自筆本は、渡す相手によって細かな点で内容が異なっています。例えば、漢文に不慣れな人に与えるものには、行間にかなを付記して読みやすくするなどの工夫が凝らされています。

現存する自筆本の中で最も丁寧なものは、作家の大佛次郎が所蔵していたものです。その装丁の丁寧さから、大名の若殿や姫君に贈るために書かれたものと推測されています。

この紀行文は、単なる旅行記としてだけでなく、当時の社会情勢や為政者への批判精神、そして沢庵宗彭という人物の思想を垣間見ることができる貴重な資料と言えるでしょう。鎌倉の歴史や文化に興味を持つ人々にとって、必読の書と言えるでしょう。

参考文献

澤寿郎監修・著 鈴木棠三編著『鎌倉：古絵図・紀行 鎌倉紀行篇』（東京美術、1976年発行）
「鎌倉順礼記」 - ウェイバックマシン（2013年12月12日アーカイブ分）『かながわの歴史文献55』 神奈川県立図書館、2008年3月。

外部リンク
「鎌倉順礼記」 - ウェイバックマシン 神奈川県立図書館

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