河原院

河原院の歴史と伝説

京都の下京区に存在した河原院は、平安時代の貴族である源融の邸宅でした。この一帯は南側に六条大路、北側に六条坊門小路、東側に東京極大路、西側に萬里小路があり、広大な敷地を占めていました。伝説によると、河原院は陸奥国塩竈の自然風景を模して築かれた庭園があり、特に尼崎から毎月30石の海水を運んで製塩を楽しむという贅沢な文化が存在しました。

源融が亡くなった後、その子である昇が遺産を相続し、後に宇多上皇に献上されて仙洞御所の一部となりました。その後、融の三男である仁康に与えられ、寺院としても栄えましたが、仁康が祗陀林寺を創設する際、河原院の本尊が移されたため、次第に荒れていきました。特に火災の影響を受け、河原院は荒廃し、最終的にはその面影を失ってしまいました。

現在の京都市下京区木屋町通五条下ルには「河原院址」と記された石碑が設置されており、この地点はかつての庭の中の島だった「籬の島」の跡として伝わっています。この石碑の近くにある老木の榎はかつての森にあった木の一つだと言われていますが、現在はその位置が河原院自体の推定地から外れているという特徴があります。

河原院にまつわる伝説

河原院には、源融の幽霊が出没するという伝説が数多く残っています。この話は『今昔物語集』などの古典文学でも紹介されており、宇多上皇にまつわるエピソードが特に有名です。例えば、上皇が滞在中に融の霊が現れて「ここは私の家です」と話しかけたところ、上皇はその霊を厳しく叱責したため、以降その霊は出現しなかったと言います。

また、宇多上皇が御息所と共に河原院で過ごしていた際、融の霊が出現し「御息所がほしい」と訴えました。上皇はこれを拒否しましたが、御息所は一時的に意識を失ってしまいました。その後、急ぎ宮中に戻って僧に祈祷を依頼することで御息所は回復しました。

他の伝説でも、融の霊が御息所を建物の中へ引き入れようと試み、上皇が問いかけると「融」との返答があったため、御息所は解放されたものの、既に意識は失ってしまったという話があります。

また、『今昔物語集』には、河原院で一夜を過ごそうとした夫婦の話もあります。夫が馬を繋いでいる間に、妻が建物の中から差し出された手に捕まってしまうという恐ろしい出来事が描かれています。夫が戸を開こうとしましたが、堅く閉ざされており、最終的に壊して中に入ったところ、妻の血を吸い尽くされた死体が吊るされていたという悲劇的な結末が記されています。

関連する神社と人物

河原院には、融、琴浦神社、鹽竈神社といった関連するのもたくさん存在します。これらの神社は、源融に関係する人物たちや物語を生き続けさせる役目を果たしており、河原院の伝説と共に地域の歴史を豊かに彩っています。

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