油阪駅

油阪駅：奈良の街と共に歩んだ、そして消えた駅

油阪駅は、かつて奈良県奈良市に存在した近畿日本鉄道（近鉄）奈良線の駅です。現在は廃駅となっており、近鉄奈良線の地下化工事に伴い、1969年12月9日にその歴史に幕を閉じました。同日、現在の新大宮駅が開業しています。

駅の構造と周辺環境

油阪駅は、国鉄（現JR）線を越える築堤上に位置し、2面2線の相対式ホームを持つ小さなコンクリート造りの駅舎を有していました。近鉄奈良駅方面は今辻子交差点で地上に降り、大宮通り（現在の東行車線）を併用軌道で進んでいました。南側には国鉄奈良駅が近接しており、乗換も容易でした。北側には船橋通り商店街が広がり、奈良交通本社も近接していたため、地下化以前は当駅始発の奈良交通バスが多数運行されていました。停車する列車は普通列車の他に、急行、準急も停車していました。特急は通過し、快速急行は当時設定されていませんでした。

歴史と変遷

油阪駅の歴史は古く、1914年（大正3年）7月8日、大阪電気軌道奈良駅移転と同時に「奈良駅前駅」として開業しました。その後、1922年（大正11年）に「油阪駅」と改称されています。第二次世界大戦後の一時期には、大和西大寺駅と油阪駅間に「キャンプ・カー駅」が設置されていたという興味深い歴史も持ちます。

1969年の廃止後、駅跡地周辺は大きく様変わりしました。国鉄線を越えていた場所には大宮通り（国道369号）の高架橋（大宮跨線橋）が建設され、交通の主役は電車から車へと移り変わりました。地下化と同時に道路拡幅が行われましたが、南側中心に行われたため、北側には当時の面影を残す場所も多く見られます。しかし、駅前商店街は接続駅を失ったことで往時のにぎわいはなくなり、静かな石畳の道となっています。現在、駅跡地付近には奈良交通のバス停「油阪船橋商店街前」があり、多くのバスが発着しています。また、奈良県立大学も近隣に位置しています。その後、JR奈良駅高架化工事に伴い、大宮跨線橋は2008年に撤去されました。結果、近鉄線が地下化、JR線が地上から高架へと逆転した状況となっています。

復活構想とその終焉

近年、世界遺産である平城宮跡を横切る近鉄奈良線の移設計画が持ち上がり、油阪駅の復活も検討されました。2020年7月には、奈良県知事、奈良市、近畿日本鉄道の3者は移設計画に向けた協議に入ることで合意。新たな移設区間には「朱雀大路駅」「新大宮駅（移転）」「油阪駅（復活）」の3駅設置が提案されました。油阪駅の復活は現実味を帯びていましたが、2023年4月に行われた奈良県知事選挙の結果、新たな知事は事業の必要性や費用対効果を疑問視し、計画を凍結。これにより、油阪駅の復活は残念ながら消滅しました。

隣の駅

油阪駅の隣の駅は、大和西大寺駅と近畿日本奈良駅（現・近鉄奈良駅）でした。

まとめ

油阪駅は、近鉄奈良線の歴史を語る上で重要な駅でした。その存在は、奈良市の発展と深く結びついており、駅の変遷は街の変遷そのものと言えるでしょう。復活は叶いませんでしたが、油阪駅の記憶は、奈良の歴史の中にしっかりと刻まれています。

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