沼春雄

沼春雄 - 攻めと受けの狭間を駆け抜けた将棋人生

1949年生まれの沼春雄氏は、東京都杉並区出身の将棋棋士です。9歳頃に工場で将棋に興じる人々を見て将棋の面白さに目覚め、その才能を開花させました。

奨励会時代からプロ入りまで

1965年には第1回高校選手権で優勝という輝かしい実績を残し、その後も奨励会で活躍しました。旧制度の奨励会三段リーグでは、1972年度前期には関西優勝を果たすも、東西決戦で敗れ四段昇段を逃すという悔しい経験もしています。1975年7月、12勝4敗の好成績でプロ入りを果たします。プロ入り後は、名人戦・順位戦の主催者移行によるブランク期間があり、順位戦再開まで待つ必要がありました。

プロ棋士としての歩み

プロ入り後も沼氏は積極的にタイトル戦に挑戦しました。王位戦では挑戦者決定リーグ入りを果たし、内藤國雄九段、花村元司九段といった強豪棋士と対戦するなど、実力を発揮しました。十段戦でも予選で複数の強豪を破り、十段リーグ入りまであと一歩というところまで迫るなど、その実力は折り紙付きでした。早指し将棋選手権では本戦で2勝を収めるなど、持ち前の攻撃的な棋風で活躍しました。

しかし、順位戦では苦戦を強いられることもありました。C級2組順位戦では、最終局で惜しくも敗れ昇級を逃すなど、上位クラスへの昇格は容易ではありませんでした。それでも、翌期には見事C級1組への昇級を果たしました。しかし、C級1組では2期連続で降級点を喫し、その後は思うような成績を残せませんでした。

攻めと受けの絶妙なバランス

沼氏の棋風は、居飛車党で、相手が居飛車ならば矢倉、相手が振り飛車ならば急戦形を好んで指す、攻めを重視したスタイルでした。時折、四間飛車や向かい飛車など、振り飛車も指すなど、柔軟な対応力も持ち合わせていました。終盤では、危うい受けを見せることもあったなど、攻めと受けのバランス感覚に優れた棋士でした。

将棋界への貢献

棋士としての活動に加え、日本将棋連盟編集部に長く在籍し、「将棋世界」誌や「将棋年鑑」の編集長を務めるなど、将棋界の発展にも貢献しました。師匠である佐瀬勇次九段の娘と結婚し、佐瀬春雄と改姓しています。弟子に指導棋士の藤本康一郎氏がいるほか、木村一基九段（当時奨励会員）をプロ入りまで指導するなど、後進の育成にも力を注ぎました。

意外なエピソード

2003年には、対岡崎洋戦において、後手番で「6六歩成」と、成れない歩を成してしまうという珍しい反則負けを喫したというエピソードも残っています。

まとめ

沼春雄氏は、プロ棋士として、そして将棋界の編集者として、多方面で活躍した棋士でした。常に攻めを意識した積極的な棋風と、時に見せる危うい受けの妙技は、多くの将棋ファンを魅了しました。その棋士人生は、攻めと受けの絶妙なバランスの上で成り立っており、将棋界に貴重な足跡を残しました。通算成績は303勝517敗。2009年に引退し、現在は七段の称号を持っています。著書に「ささやかなトリック100」があります。

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