法泉寺 (鎌倉市)

法泉寺（ほうせんじ）

法泉寺は、室町時代に相模国鎌倉郡法泉寺ヶ谷（現在の神奈川県鎌倉市）に存在した臨済宗の寺院です。山号を竹園山と称し、関東十刹の一つとして知られていました。

歴史

法泉寺は、室町幕府の有力者であった畠山国清によって開基され、素安了堂を開山として創建されました。創建時期は、畠山国清が関東執事を務めていた1353年（文和2年）から1361年（康安元年）の間と推定されます。素安了堂は1360年（延文5年）に69歳で没しているため、寺の創建はそれ以前に行われたと考えられます。

当時の法泉寺は、釈迦三尊を安置する仏殿を中心に、伽藍が整備され、隆盛を誇っていました。「同砌如法写経讃」には、如法写経の勤行が朝夕に慇懃に行われ、普賢大士や十羅刹女、二聖二天三十番神、十二神将などの諸尊が寺を守護していた様子が記されています。また、法泉寺は、1351年（観応2年）に武蔵国男衾郡崛戸郷の地頭職を安堵され、1353年（文和2年）には、伊豆国狩野荘を寺領として交付されています。さらに同年には、法泉寺の長老が伊豆国修善寺の殿堂を新築し、天下の太平を祈った功績により、足利尊氏から静学坊を塔頭として与えられています。

1361年（康安元年）には、陸奥国如法寺が法泉寺の末寺となり、1363年（貞治2年）には、鎌倉御所基氏によって下曽比郡が寄進されています。1386年（至徳3年）には、正式に関東十刹に列せられました。

しかし、近世の資料である建長寺本末敗壊改派牒には、「敗改十刹　相州鎌倉扇谷邑　法泉寺」とあり、法泉寺は廃寺となったことが記されています。廃寺となった時期は不明です。

その後、1547年（天文16年）に北条氏の鎌倉代官である大道寺盛昌が、法泉寺再興のために土地を寄進し、北条氏康の寄進地と合わせて三百疋の土地を宝珠庵に与えました。翌1548年（天文17年）には、この替地を泉ヶ谷に与え、1549年（天文18年）には同所の竹木の伐採を禁じるなど、再興に向けた動きが見られましたが、この再興が実現したかどうかは明らかになっていません。

現在、東京都港区麻布の阿弥陀寺にある鐘は、もとは法泉寺の鐘であり、鐘には清拙正澄の銘と、鋳工物部道光の名が刻まれています。この銘から、当時の法泉寺の住職が素安了堂であったことがわかります。

まとめ

法泉寺は、室町時代に関東十刹として栄えた臨済宗の寺院でしたが、廃寺となり、その歴史は謎に包まれています。しかし、法泉寺の鐘や文献などから、その存在を偲ぶことができます。

参考文献

* 河井恒久 等編 編「巻之四 法泉寺谷」『新編鎌倉志』 第5冊、大日本地誌大系刊行会〈大日本地誌大系〉、1915年、91頁。

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