泰緬戦争 (1785年-1786年)

泰緬戦争：チャクリー朝とコンバウン王朝の激突

泰緬戦争（たいめんせんそう）は、18世紀後半にシャム（現在のタイ）のチャクリー朝とビルマ（現在のミャンマー）のコンバウン王朝の間で行われた一連の戦争を指します。タイ語では「สงครามเก้าทัพ」、ビルマ語では「ကိုးတပ်မတော်တိုက်ပွဲ」と表記されます。この戦争は、両国間の勢力争いを背景に、激しい戦闘が繰り広げられました。

戦争勃発の背景

1782年、チャオプラヤー・チャクリーは、当時混乱していたシャムを統治していたタークシン王に対してクーデターを起こしました。タークシンは処刑され、チャクリーは自ら王位に就き、チャクリー朝を創始しました。この政変は、周辺諸国に大きな影響を与え、特にビルマのコンバウン王朝は、シャムの混乱に乗じて勢力を拡大しようと考えました。

1785年、コンバウン王朝の王ボードーパヤーは、自ら軍を率いてシャムの首都バンコクを目指し侵攻を開始しました。コンバウン軍は、複数のルートからシャム領内へ侵入し、首都バンコクを包囲しようとしました。しかし、チャクリー朝は事前にコンバウン王朝の侵攻計画を察知しており、万全の対策を講じていました。

チャクリー朝の防衛戦略

チャクリー朝は、コンバウン軍の進軍ルートを事前に特定し、要所に兵力を配置して待ち伏せしました。これにより、コンバウン軍は各所でシャム軍の激しい抵抗に遭い、進軍は遅滞しました。シャム軍は、コンバウン軍の侵攻を巧みに阻止し、各戦線で敵軍を撃破することに成功しました。特に、チャクリー朝の優れた軍事指揮官たちが、緻密な戦略を立案し、実行に移したことが勝利の大きな要因となりました。

翌1786年にもコンバウン王朝は再度チャクリー朝への侵攻を試みましたが、これもシャム軍によって撃退されました。二度の侵攻失敗により、コンバウン王朝はシャムへの侵攻を断念せざるを得なくなりました。

アユタヤ王朝滅亡後の戦術研究

アユタヤ王朝が滅亡した後、タークシンやチャオプラヤー・チャクリーは、過去の戦訓を深く研究し、文献翻訳を通じてコンバウン王朝の軍事戦術を徹底的に分析しました。この研究に基づき、チャクリー朝は独自の軍事戦略を構築し、コンバウン王朝の侵攻に備えていたと言われています。特に、アユタヤ王朝の陥落から学んだ教訓を活かし、防御戦術を強化したことが、今回の戦争での勝利に繋がりました。

泰緬戦争の意義

泰緬戦争は、チャクリー朝の成立直後に行われた重要な戦争であり、チャクリー朝の存続をかけた戦いでもありました。この戦争での勝利は、チャクリー朝の支配を確固たるものとし、その後のタイの歴史に大きな影響を与えることとなりました。また、コンバウン王朝の侵攻を退けたことで、シャムは独立を維持し、東南アジアにおける勢力バランスを保つ上で重要な役割を果たしました。

参考文献

柿崎一郎著『物語タイの歴史』
岩波講座『東南アジア史 近世国家群の展開』

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