津山まつり

岡山県津山市の秋を彩る「津山まつり」は、地域の信仰の中心である総鎮守・徳守神社をはじめ、東の大隅神社、そして西の高野神社の三社が合同で行う大規模な秋の祭礼です。例年10月の第3週と第4週の週末を中心に開催され、400年を超える長い歴史を持ち、多くの市民に親しまれています。

歴史と変遷

津山まつりの起源は、江戸時代の初期に遡ります。慶長9年（1604年）、美作津山藩初代藩主である森忠政が徳守神社を再建した際に始まった祭礼がその端緒とされています。当初は徳守神社と大隅神社の秋祭りの総称でしたが、近年になって高野神社も加わり、現在の形となりました。

祭礼は次第に賑わいを増し、寛文7年（1667年）には徳守神社の祭礼に24町が飾り立てた「練り物」、すなわちだんじりを繰り出すようになります。さらに宝永4年（1707年）には大隅神社の祭礼でもだんじりが登場し、これが恒例となりました。森氏の後、津山藩主となった松平家（徳川家康の次男・結城秀康の系統）のもとでも祭りは盛況を極め、歴代藩主やその家族が津山城内から祭りの様子を見物するほどでした。この伝統は今も受け継がれており、大隅神社と徳守神社の城下町関係のだんじりは、津山城址の入り口にあたる津山観光センターに集結して統一行動を行うのが慣例となっています。

だんじりの形態も時代の流れとともに変化しました。明治時代までは、縁柱に担ぎ棒を通して人々がだんじりを担ぎ、その勇ましさを競っていました。しかし、大正から昭和にかけては台車に乗せて曳き出すスタイルへと変化しました。現代でもだんじりと台車を区別する意識は残っていますが、世代を経るごとにその意識は薄れつつあります。一方で、本来の「担ぐ」だんじりの姿を次世代に伝えようとする動きも見られます。平成21年（2009年）には、宮脇町の「簾珠臺（れんじゅだい）」が120年ぶりに担がれて徳守神社に宮入りを果たしたほか、江戸時代の出動順序を復活させる試みも行われました。

祭りの衰退を危惧した有志による「徳守祭だんじり若頭會」が結成されるなど、祭りを盛り上げ、継承するための活動も活発です。平成25年（2013年）には、美作国建国1300年記念に合わせて徳守神社の氏子町内のだんじりほぼ全てにあたる23台が出動し、困難な巡行を見事に成功させました。これは過去の文献と比較しても史上最多の出動台数として特筆されます。

祭りの見どころ

津山まつりの最大の魅力は、国の史跡である津山城跡（鶴山）を中心とした美しい城下町を舞台に、豪華絢爛なだんじりが練り歩く光景です。歴史ある町並みと勇壮な祭りのコントラストは見事です。

また、総鎮守である徳守神社の祭礼では、文化6年（1809年）に造られた「徳守神社の大神輿」が登場します。この神輿は、その重さが約300貫（1トン以上）にも及び、日本三大みこしの一つに数えられています。200年以上を経た今もなお現役で巡幸を務め、交代要員を含め150人以上の担ぎ手が必要となるその迫力は圧巻です。

祭りを盛り上げる主役の一つである「津山だんじり」は、各町内で大切に守り受け継がれています。岡山県指定重要有形民俗文化財に指定されているだんじりが徳守神社に20台、大隅神社に7台あり、これに昭和以降に新造された「飾り山車」が加わり、合計約50台のだんじりが祭りを華やかに彩ります。現存する最も古いだんじりとされる、文政3年（1820年）に造られた宮脇町の「簾珠臺」も今なお祭りで曳き出され、その長い歴史を物語っています。

津山だんじり囃子

津山だんじりの巡行に欠かせないお囃子は、津山藩主松平家の「陣太鼓」がルーツであると伝えられています。初代藩主・松平宣富が津山に入国した際に祭りを楽しんだことから、歴代藩主は祭り道具を城内に引き入れることを慣例とするなど、祭りと藩主の間には深いつながりがありました。軍陣で士気を鼓舞し、進退を指示するために用いられた陣太鼓は、鉦（陣鐘と呼ばれる小型の半鐘）とともに打ち鳴らされました。現在のだんじり囃子も、太鼓と鉦のみで構成されており、その源流が陣太鼓にあることを強く感じさせます。

松平家の陣太鼓が祭りに用いられるようになったのは、津山だんじりが最も成熟した幕末頃からと推測されています。有事の際に備え、城下の祭り（徳守神社、大隅神社）に陣太鼓を用いることで、城下の士気を高めると同時に、武家以外の住民にも広く周知を図る目的があったと考えられています。

参加だんじりについて

津山まつりの期間中、統一行動に参加するだんじりは計48台確認できます。そのうち、長い歴史を経て各町内に伝承されてきた27台が岡山県指定重要有形民俗文化財に指定されています。内訳は徳守神社関係が20台、大隅神社関係が7台です。これらに、比較的新しい時代に製作された飾り山車が21台（徳守神社関係4台、大隅神社関係4台、高野神社関係13台）加わり、個性豊かなだんじりが津山の町を練り歩きます。

津山まつりは、地域の歴史と文化、そして人々の熱意が一体となった、見応えのある伝統的な祭礼です。

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