津田左右吉

津田左右吉 (1873年 - 1961年)

津田左右吉（つだ そうきち）は、明治から昭和にかけて活躍した日本の著名な歴史学者であり、思想史の専門家です。彼は1873年に岐阜県に生まれ、早稲田大学文学部の教授として教鞭を執る一方で、日本古代史や神話の研究において大きな業績を残しました。特に、記紀（『古事記』と『日本書紀』）の史料批判に取り組み、実証史学の発展に貢献したことで知られています。

生い立ちと経歴

津田は、岐阜県の小藩に生まれ、幼少期から学問に興味を示しました。文明小学校を卒業後、様々な私塾に通った後、東京専門学校に入学し、1891年に卒業しました。その後、中学教師としてのキャリアをスタートさせ、歴史研究を続けました。1897年には千葉尋常中学校の教員となり、白鳥庫吉の指導のもとで歴史を深く学びました。

1901年に『新撰東洋史』を発表し、歴史家としての名を馳せました。その後は満鉄東京支社に籍を置き、東洋史の調査研究を行いますが、1918年には早稲田大学の講師に就任。以降、著名な研究成果を次々と発表し、学問の道を邁進します。

主要な研究成果

津田の代表的な著作には、1919年発表の『古事記及び日本書紀の新研究』と1924年発表の『神代史の研究』があります。これらの著作では、古代の神話に対する批判的検討が行われ、神武天皇をはじめとする多くの天皇が実在の人物ではなく、後世の官人によって創作されたものであると指摘しました。

彼はまた、記紀における皇統譜の虚構性を論じ、神話や歴史記述が天皇の正当性を強化するために作られたものであるとの見解を持ちました。これらの考察は、戦後の日本史研究において重要な位置を占め、長らく通説として受け入れられてきました。

津田事件とその影響

1939年には、津田が行った発言が「津田事件」と呼ばれる発禁騒動の引き金となりました。彼の歴史観は、当時の政府や学界から激しく反発を受け、出版された書籍が発禁処分となる事態に発展しました。しかし、彼は逆に学界からの支持を集め、戦後には多くの学生や研究者に影響を与える存在となりました。

戦後の活動

戦後の津田は、左翼思想や共産主義に反対する立場を取り続けではあったものの、天皇制には中立的な立場で論じ、民主主義と共存する可能性についても言及しました。1946年には、自身の思想を評価されるようになり、1950年代には文化勲章を受章するなど、長い学問の道を歩みました。

津田は1961年に死去し、その業績を記念するために「津田左右吉博士記念館」が開館され、彼の研究に対する評価は今日においても高く保たれています。彼の研究は、古代の歴史をより深く理解するための重要な基盤を提供したと言えます。

まとめ

津田左右吉は、日本古代史の研究において、歴史の見方を刷新した重要な学者です。その学問的貢献は、実証主義に基づいた歴史批判の先駆者として、後の学者たちに多大な影響を与え続けています。

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