津軽と南部

青森県における津軽と南部の対立：歴史的背景と現代への影響

青森県には、津軽地方と南部地方という二つの地域があり、長年にわたり対立が続いてきました。この記事では、その歴史的背景、地理的区分、そして現代への影響について詳しく解説します。

津軽と南部の区分

津軽地方: 現在の青森県西部を指し、江戸時代には津軽氏が治める弘前藩と黒石藩が存在しました。
南部地方: 江戸時代に南部氏が支配した地域で、陸奥国に位置し、現在の青森県東部、岩手県中部・北部、秋田県の一部にまたがっていました。現代では、青森県南東部と岩手県中部・北部を指すことが一般的です。

中世以降の対立

戦国時代

南部氏は戦国時代、現在の岩手県中部・北部と青森県全域を領有していました。南部一族である大浦氏は津軽地方に基盤を置く土豪でしたが、1571年に大浦為信が津軽地方の南部系豪族を滅ぼし、津軽、外ヶ浜、糠部郡の一部を支配下に置き、南部氏から独立しました。この際、南部氏の重臣である石川高信らが討たれています。

江戸時代

大浦氏は津軽氏と名乗り、豊臣政権から大名として認められました。徳川家康の時代には、為信が家康に属し関ヶ原の戦いに参戦、津軽氏は弘前藩として江戸時代を生き抜きました。以降、弘前藩と南部氏の盛岡藩は対立を深めました。江戸時代には、ヒノキ材の伐採を巡り越境した領民が殺害される檜山騒動や、盛岡藩の藩士が弘前藩主を暗殺しようとした相馬大作事件などが起きています。

戊辰戦争

戊辰戦争では、両藩とも奥羽越列藩同盟に加盟していましたが、弘前藩が新政府軍に恭順。その後、盛岡藩が降伏しますが、降伏が受理された後に弘前藩が盛岡藩に出兵する野辺地戦争が起こり、さらなる遺恨を残しました。

明治時代

明治2年、戊辰戦争の戦後処理として、南部盛岡藩は津軽藩の取締下に置かれることが決定されました。しかし、領民の猛反発により、この決定は撤回され、最終的には大関藩が取締を行うことになりました。明治4年の府県統合では、弘前、黒石、七戸、八戸、斗南の5県が統合され弘前県となりました。旧南部藩の旧津軽藩への統合には、斗南藩の意向が強く働いていました。斗南藩は、会津藩士が移住した下北半島を領地としていたため経済状況が悪く、経済状態の良い旧津軽藩との統合を目指したのです。

同年9月5日に熊本藩出身の野田豁通が弘前県大参事に任命されましたが、野田の県庁移転提案を受け入れた政府は同月23日には県庁を青森町に置くこととし、県名も青森県に改めました。

藩境塚

野辺地町の馬門（南部側）と平内町の狩場沢（津軽側）には、藩境を示す藩境塚が存在します。ここは旧藩境と方言の境界が一致する珍しい場所であり、現在でも市町村が異なるため、小学生は別の小学校に通い、方言の境界が守られています。

現代への影響

青森県では、県の行政資源が青森市に集中しているという問題があります。県立大学や県立病院などの県立施設の多くが青森市に集中しており、この状況を「津軽と南部の確執」の文脈で捉える考え方もあります。しかし、青森市は旧津軽郡の領域に含まれるものの、津軽地方の辺境に位置することから異論もあります。

青森市を「境界」と捉えるならば、行政資源の集中は「南部地方」と「青森市以外の津軽地方」との対比で考える必要があります。この場合、県立施設の配置は比較的均等であり、問題は単なる「県庁所在地への一極集中」に過ぎないという見方もできます。

まとめ

青森県の津軽と南部の対立は、中世以降の歴史的背景に根ざしており、現代にもその影響を残しています。藩境塚のような地理的な境界や、行政資源の偏りといった問題を通して、その複雑な関係性を垣間見ることができます。

関連項目

津軽地方
南部地方
南部地方 (青森県)
下北地方
野辺地戦争
檜山騒動

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