洲之内徹

洲之内徹について

洲之内徹（すのうち とおる）は、1913年1月17日に愛媛県松山で誕生し、1987年10月28日に亡くなった日本の美術エッセイスト、小説家、画廊主である。特に美術エッセイ「気まぐれ美術館」の執筆で知られており、そのユニークな視点と鋭い洞察力で多くの読者に愛された。

早年と教育

洲之内は松山中学（現在の愛媛県立松山東高等学校）を卒業し、1930年に東京美術学校の建築科に入学した。在学中にはプロレタリア運動に参加し、1932年には逮捕されたことにより、退学処分となる。その後、故郷の松山に戻り、引き続き運動に関与したが、徴兵検査後に再度の逮捕と収監を経験する。戦後は古本屋を開業しながら小説を書くようになり、「鳶」や「雪」で横光利一賞の候補に選ばれるという成果を上げた。

上京と作家活動

1952年、友人の田村泰次郎の勧めで上京し、無収入のまま小説執筆を続けた。家族との関係は複雑で、離散を経験した。この時期に『群像』誌に「棗の木の下」を発表し、芥川賞候補に選ばれるなど、次第に作家としての名声を高めていった。1961年に田村の助けを得て「現代画廊」を引き継ぎ、数々の展覧会を開催する。

現代画廊の展開

「現代画廊」は1959年に田村によって設立され、洲之内が経営を引き継いだ1961年以降、彼の個性が色濃く反映された。画廊主としての彼は、名もない画家に個展の場を提供し、過去の作家の遺作展も手掛けた。展覧会を重ねる中で、多くのユニークな作品に触れ、精力的に活動を続けた彼は、時に自らの車を使って地方に作品を運ぶなど、経営の難しさも乗り越えた。

芸術エッセイの発表

洲之内は1962年から美術エッセイの連載を開始し、特に「気まぐれ美術館」は高い評価を受けた。この連載は彼の個人的な視点と経験を通じて美術を語り、多くの読者に受け入れられた。小林秀雄などからも称賛を浴び、1964年まで続いたこのシリーズは、美術界において重要な作品となる。

洲之内コレクション

彼は画商としても才能を発揮したが、自身が気に入った作品はなかなか客に売らなかったため、コレクションを築いた。死後にはその146点の作品が宮城県美術館に寄贈され、「洲之内コレクション」として展示されている。これらは彼が心から愛した作品であり、彼の美意識を今に伝えるものとなっている。

著作と影響

洲之内の著作は「絵の中の散歩」や「気まぐれ美術館」などがあり、国内外の美術に対する彼の豊かな視点を示している。彼の作品は、芸術と文学が交差する独特のスタイルを持ち、多くのファンに影響を与え続けている。彼の死後も、その遺産は語り継がれ、今日の美術界において重要な位置を占めている。

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