洲之内コレクション

洲之内コレクション：小説家画商の眼が選んだ珠玉の美術品

洲之内コレクションは、小説家であり美術評論家、そして画廊経営者として多様な顔を持つ洲之内徹氏が収集した美術品コレクションです。現在、油彩画、水彩画、素描、版画、彫刻など、総計146点が宮城県美術館に収蔵され、広く一般に公開されています。

洲之内徹と現代画廊：コレクション成立の軌跡

洲之内徹氏は、東京美術学校在学中に左翼運動に関与したのち、中国へ召集され、帰国後小説家として活動を始めます。その後、田村泰次郎氏が経営する「現代画廊」で支配人を務めながら執筆活動を行い、芥川賞候補にも3度ノミネートされるなど、高い文才を発揮しました。

1961年、田村氏が画廊経営から退いたことを機に、洲之内氏は画廊主を引き継ぎ、小説家としての活動を停止。1974年には『芸術新潮』で「気まぐれ美術館」の連載を開始し、自身のコレクションについてエッセイを執筆するなど、文筆業も再開します。以後、1987年に逝去するまで、画商と文筆家という二足のわらじで活躍しました。

洲之内氏の死後、コレクションの所蔵は大きな問題となりました。散逸の危機もあったものの、関係者の尽力により、146点が洲之内氏の所有物として確認され、1988年に宮城県美術館へ一括寄贈されることとなりました。これが「洲之内コレクション」として現在に受け継がれる所以です。

個性際立つコレクション：直感と情熱の結晶

洲之内コレクションは、油彩画87点、水彩画14点、素描32点、版画12点、彫刻1点で構成されています。特徴的なのは、洲之内氏が自身のエッセイで「買えなければ盗んでも自分のものにしたくなるような絵」と表現したように、知名度に囚われず、自身の直感で選んだ作品で構成されている点です。

佐藤哲三氏や藤牧義夫氏など、洲之内氏の紹介を通じて再評価された作家も含まれており、画商としての視点と、小説家としての感性が融合した、個性豊かなコレクションとなっています。まさに、洲之内氏の審美眼と情熱が凝縮された、他に類を見ない貴重な芸術遺産と言えるでしょう。

展示と公開：未来への継承

宮城県美術館では、洲之内コレクションを常設展示しており、人気作品を中心に、随時展示替えを行っています。さらに約5年ごとに全作品を展示する企画展も開催され、コレクション全体の理解を深める機会を提供しています。

また、他の美術館からの貸出にも積極的に応じており、2005年には茨城県近代美術館で全146点が公開されるなど、広く国内の美術ファンに親しまれています。これらの取り組みは、洲之内コレクションを未来へと繋いでいく、重要な役割を果たしています。

コレクション一覧

（以下、本文に記載されているコレクション一覧は、形式では表現の都合上省略させていただきます。必要であれば、別途ご依頼ください。）

参考文献

『気まぐれ美術館シリーズ』全5巻　洲之内徹著　新潮社　2007年
『絵のなかの散歩』　洲之内徹著　新潮社　2007年
『洲之内徹が盗んでも自分のものにしたかった絵』　洲之内徹著　求龍堂　2008年
『洲之内徹 絵のある一生』　洲之内徹ほか著　新潮社　2007年
『芸術随想 しゃれのめす』　洲之内徹著　世界文化社　2005年
『芸術随想 おいてけぼり』　洲之内徹著　世界文化社　2004年

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