浅利義明

浅利又七郎義明の生涯

浅利又七郎義明（あさり またしちろう よしあき）は、1822年に誕生し、1894年に亡くなった江戸時代末期から明治時代にかけての著名な剣術家です。彼は中西派一刀流の創始者中西子正の次男であり、のちに浅利義信の養子となりました。義明はその剣術の腕前から、「剣道の神様」と呼ばれるほどの評価を受けました。彼の幼名は兜七郎でした。

剣術の修練

義明は幼少期から実父の中西子正や、養父である浅利義信から剣術の指導を受けました。彼が24歳の時の立合い稽古の回数はなんと週に1400回にも達し、その際、1度も敗北を喫することはありませんでした。彼の稽古態度は特異で、相手が近づくだけで「参りました」と剣を引くことがありました。その剣技に触れた木下寿徳は、「上げ小手の裏を打つ人は義明以外に見たことがない」と驚嘆しています。彼の打つ一刀流の形は、下手のない鋭いものであり、勝海舟は「義明にかかったら誰もが手足が縮んでしまう」と称賛しました。

浅利家への入門

義明の義父である浅利義信は中西派一刀流の別家で、弟子の千葉周作を養女と結婚させ道場を託しましたが、周作夫妻との不和から道場は廃業に至ります。最終的に義明は中西家から養子に迎え入れられ、道場の指導力を受け継ぐこととなります。また、彼は小浜藩江戸屋敷の剣術指南役としても活動しました。

優れた弟子たち

義明の教えを受けた弟子の中には、一刀正伝無刀流を創設した山岡鉄舟もいます。義明と鉄舟は、三間五間の道場で約三時間にわたり戦いましたが、勝負はつきませんでした。鉄舟が体当たりを仕掛けても、熟練の義明は巧みに対応し続けました。最終的に鉄舟が義明を倒した際、義明は「山岡さん、今の勝負はどうでしたか？」と問いかけます。鉄舟は自信を持って勝ちを主張しましたが、義明は自身の技術に誇りを持っており、「お前が勝ったのではなく、私が勝った」と併せて、棘のある言葉が交わされました。鉄舟はその後、非礼を詫び、義明の弟子として教えを受けることとなりました。

晩年の功績

明治維新後、義明は駿府藩主の徳川家達に剣術を教えました。また、鉄舟の紹介で有栖川宮家の撃剣御用係として活躍し、威仁親王の剣術を指導しました。彼の剣道の精神は、後の世代にも継承され、数多くの弟子たちに影響を与え続けました。1894年4月16日に義明は生涯を閉じ、剣道の世界における彼の存在は忘れられないものとなりました。

参考文献

• - 『剣の達人111人データファイル』, 新人物往来社
• - 『日本武術武道大事典』, 勉誠出版
• - 『江戸時代人物控１０００』, 山本博文監修, 小学館, 2007年

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