浅草 (花街)

浅草花街の歴史と変遷

浅草花街は、浅草寺の裏手に広がる、歴史と伝統が息づく花街です。その起源は江戸時代中期に遡り、浅草寺の門前町に誕生しました。当時、浅草には3つの花街が存在し、それぞれに異なる特徴を持つ芸妓たちが活躍していました。

広小路芸者（田楽芸者）: 雷門付近の広小路にある田楽茶屋に出入りする芸妓。
堀の芸者: 吉原遊廓に近い山谷堀の料理茶屋や船宿に出入りする芸妓。
猿若町芸者（櫓の芸者）: 芝居小屋のある猿若町に住み、歌舞伎役者や鳴り物の師匠から直接指導を受けていた芸妓。

特に猿若町芸者は、その芸の高さから、花街の隆盛に大きく貢献しました。

明治時代に入り、1885年（明治18年）には、広小路芸者を中心に3つの花街が統合され、「浅草公園芸者」が誕生しました。これが現在の浅草芸者と東京浅草組合の母体となりました。浅草公園は、浅草寺の境内を整備して作られた公園で、周辺には料理屋や待合茶屋が立ち並び、芸妓たちはそこを出先としていました。

明治末期には、花街は浅草寺の裏側へ移転し、大正時代には芸妓1060名、料理屋49軒、待合250軒を数えるほどに繁栄しました。しかし、1923年（大正12年）の関東大震災で花街は大きな被害を受けました。それでも、花街はすぐに復興し、昭和初期には芸妓750名、置屋300軒、料理屋37軒、待合253軒と再び活気を取り戻しました。この時代には、市丸や三浦布美子など、多くの名妓を輩出しました。

1941年（昭和16年）の太平洋戦争勃発により、花街は徐々に自粛を余儀なくされ、芸妓たちは工場へ動員されました。1944年（昭和19年）には、花街は全面営業停止となりました。1945年（昭和20年）3月10日の東京大空襲では、花街も甚大な被害を受け、多くの命が失われました。

終戦後、1946年（昭和21年）に花街は復興し、芸妓40名、料亭16軒、置屋13軒で再開しました。1950年（昭和25年）には、「浅草三業組合」が組織され、芸妓たちは座敷だけでなく、三社祭などの行事にも積極的に参加するようになりました。昭和30年代前期には、花街は再び最盛期を迎え、料亭102軒、芸妓600名に達しました。

しかし、昭和40年代になると、芸妓や料亭の数は減少の一途をたどり、2011年（平成23年）現在、芸妓（立方、地方合わせて）は54名、料亭は8軒となり、全国で唯一、幇間が6名在籍しています。

現在、浅草花街では、花柳界に馴染みのない一般客向けにお座敷講座を開き、また『浅草おどり』を開催するなど、花街文化の伝承に力を入れています。

主な料亭・割烹

以下は、浅草花街に所在する主な料亭・割烹です。

都鳥: 浅草3丁目23番10号
割烹家 一直: 浅草3丁目8番6号
割烹 あさくさ: 浅草3丁目37番1号
割烹 福八: 浅草3丁目3番4号
浅草 草津亭: 東京都台東区浅草3−18−10

その他

NHKで放映されたドラマ「おしん」の舞台の一つとして、浅草花街が描かれています。ドラマでは、浅草花街の近隣にある芸妓専門の髪結処で、主人公のおしんが修行する設定となっています。

出典

浅原須美『東京六花街　芸者さんから教わる和のこころ』ダイヤモンド社、2007年。ISBN 978-4478077894。
上村敏彦『東京 花街・粋な街』街と暮らし社、2008年。ISBN 978-4901317191。

関連項目

東京の[[花街]]

外部リンク

東京浅草組合/浅草見番公式ホームページ

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